第6話女傑対決

 俺はリュックからノートパソコンを出して画像通話が出来るようにしたが、その間の行動を邪魔される事はなかった。だがホールにいた騎士と兵士は、眼を見開いて驚愕していた。とても演技には見えないから、本当にノートパソコンを知らないようだし、画像通話には恐怖すら感じているようだった。


 スマホや防犯ブザーを魔道具と言っていた、バルバラと言う魔術師衣装の女も顔を青ざめさせている。だが余りにおかしい、赤毛の姉妹と兵士には外国訛りが全く無いし、スマホもノートパソコンも知らないなどありえるのだろうか?


 外国の狂信団体が日本に来たと仮定しても、飛行機か船は使ったはずだ。その時にパソコンやスマホを見ていないはずがないのだ、だがこの反応は産まれて初めて見たとしか思えない。


「さて、私が一朗の姉貴分の龍子だが、あんたがローゼンミュラーさんかい?」


「そうだ、私がローゼンミュラー家のアーデルハイトだ」


「そのアーデルハイトさんはどこの国の人間なんだい?」


「どこだと? バッハ聖教皇国に決まっているだろうが!」


「だが私の弟分は、そんな国に行った覚えなど無いそうなんだが」


「姉上、私が話しましょう」


「うむ、任せた」


「私はローゼンミュラー家の次女・バルバラだ、それは恐らく転移の罠にかかったのだろう」


「転移の罠だって?」


「今は失われた大魔法だが、稀に遺跡の奥底に残っているそうだ」


「まあいい、まどろっこしい話はなしだ、一朗を解放する条件を聞こうか」


「そうだな、金貨100枚と魔道具全部だ」


「魔道具は用意できるが金貨は無理だ、それと確認しておきたいのだが、胡椒は金貨と同じ重さで取引されているのか」


「それは金貨の代わりに胡椒を引き渡すと言う事か?」


「そうだ、金貨を送るのは無理だが、胡椒や砂糖・干椎茸(ほししいたけ)なら用意できる。ただしそのためには、一朗が持っている魔道具には一切手を触れないでもらいたい」


「代わりに同じものを引き渡してもらえるのだな」


「ああそれは約束しよう、それと一朗の待遇はどうなる」


「一朗殿の身分はどうなっている、それによって待遇が変わる」


「我が国に身分制度はない、国民すべてが平等だが、ローゼンミュラー家が欲している魔道具の達人と考えてくれればいい」


「そうか、ならば魔導師と同等と扱おう」


「魔導師は貴族なのか平民なのか? それとローゼンミュラー家は貴族か平民かどっちだ?」


「魔導師は貴族待遇だ、それとローゼンミュラー家はバッハ聖教皇国に仕える騎士だ!」


「騎士は厳密には貴族では無く平民だろう! ならば一朗に対する礼儀はわきまえてもらいたい」


「分かった、だが胡椒と魔道具は必ず送ってくれるのだろうな?」


「転移させられた距離による、だが支払う意思はある。こちらから魔道具を転移させれるか色々試してみるが、それまで魔導師てしての待遇は保証してもらう」


「分かった、約束しよう」


「一朗、聞こえているか?」


「大丈夫、聞こえているよ」


「こちらで出来る事は全部やる、でも最悪の場合も想定しておかないといけない」


「うん分かってる」


 姉ちゃんは警察に遭難届を出してくれるんだろう、司法修習生時代の知り合いにも連絡してくれるだろう。でも本当に異世界に転移させられていた場合に備えて、何か考えてくれているんだろう。


「今回の撮影旅行では、ドローン配達を試すとメールしていたわね」


「うん、ちょうど特区に指定されている地域の山だから、ちゃんと配達されるか試してみる心算だった」


「なら電波だけでなく、ドローンも行き来できるか試してみなさい」

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