第4話 驚愕してしまった




愛しさ余って憎さ百倍。

告白しようとしたその日からあからさまに私を避け、男友達には「あいつと付き合う? 無理無理、生理的に無理」とほざき、バレンタインには義理チョコ(チロル)すら受け取らなくなったこいつにショックを受けだんだんムカついていった。

結果、大学進学を機に連絡も途絶え今に至る。


ユージーンと6年ぶりに再会した時、一番最初に思ったのが(あ、こいつずっと前から知ってる)だった。

6年前に会っているから知ってるとかじゃなくて、それよりも前から。

ユージーンがいつもと様子の違う私を見てにっこり笑い耳元で囁いた言葉、それで私は前世を思い出しのだ。

「やっと思い出したか? 花帆.......ずっと待ってた」

こいつ、多分だけど.......ずっと前から前世のこと、思い出していたのだと思う。



❂ ❃ ❅ ❆ ❈ ❉ ❊ ❋



「よし、婚約破棄しよう」

「おいコラ待てや」

ユージーンが勝幸とわかった以上婚約なんかごめんである。

だから婚約破棄しようと言ったのに、ユージーンはまたほっぺをつまんでぐにぐにしてきた。ちょっと痛いのに!


「いいじゃん! ここ、【雨の姫と7人の王子】とかいう乙女ゲームの世界でしょ?」

「ああ、そうだ」

「なら、当然ユージーン殿下が攻略対象なんでしょ? さっさとヒロインとくっついてしまえ。そうすれば私は平和に婚活ライフを送れる、あなたはかわい子ちゃんと付き合える、一石二鳥よ!」


いいこといった! とばかりにドヤ顔をした私を、ユージーンは信じられないアホを見るような顔で見てきた。心外である。

「お前.......さてはあのゲームやったことないだろ」

「やったことはないけど.......でもそれはあなたもじゃないの?」

なんたって乙女ゲームだ。ギャルゲーやガールズアイドルゲームを女の子がやることはあっても、その逆はほとんどないだろう。けどユージーンは「甘い」とその考えを一蹴した。


「あのゲーム、男もやるやつがじわじわ増えてたんだよ、他のゲームにはほとんど実装されていない機能のせいで」

聞けばその面倒な機能をやってみる!と、人気実況者がやったおかげで、男性も【雨の姫】をやる人が増えたのだとか。

「その面倒な機能ってなんなの?」

「攻略対象に相対するライバルの令嬢との友情度によってエンディングが変わる」

「.......はいぃ?」

乙女ゲームって、男の子を攻略するものじゃないの?

「アイドルゲー要素と、急上昇する悪役令嬢人気を加味した結果だ」

元々乙ゲー人気レーベルとアイドルゲームの人気レーベルがコラボした結果が【雨の姫】らしく、そういう背景があって男性ユーザーも獲得しやすくなっていたのかもしれない。ヒロイン他女性キャラクターのデザインや設定は【The IDOL R@ISE 】のスタッフが携わっているのだとか。


「それでだな」

そこまで言うとユージーンはビシッと私を指さした。


「俺たちのルートは、ハッピーエンドバッドエンド関係なく、どう足掻いても国の反感を買って大戦争待ったナシエンドなんだよ!」

「な.......」


な……


なんですって!?



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