第八話 ちょこっとメモリーソング

流星side

はぁ、と溜息をつく。

火照ほてった顔に手を当てる。

『昨日は誘ってくれてありがとう』

彼女の言葉を思い出し、思わずニヤけた。

可愛かったなぁ…。

すっごく幸せそうな顔してて…。

「好きだなぁ」

ベースを練習してる時の真剣な顔もいいよなぁ…。

って俺、美海のことしか考えてねぇな。

一人で苦笑する。

弱ったな。こんなんじゃ、日曜日心臓がもたない…。

美海は好きなものを前にすると幸せそうな顔してくれるからなぁ。デート、楽しみだなぁ…。

俺がカフェを見つけたのは、数日前のこと。

でも、美海をデートを誘おうと思ったのは、付き合い始めてから二週間目。ずっと誘いたいとは思っていたけど、勇気を出せないでいた。情けないとは思ってたけど。

美海を前にすると、ドキドキして何も言えなくなるくらい緊張してしまう。

君がいつも素っ気ない返事をするのは、多分俺と同じで、緊張するからなんだろうか?それとも俺が好きじゃないとか?

ダメだ、わからない――。

俺は頭を抱えた。

ふと、陸翔を思い出した。

こういうのは、やっぱベテランに聞いた方がいいのか。

俺はスマホを取り出して、ラインを開いた。


陸翔!


呼びかけると、すぐに既読がついた。それと同時に短いメッセージも送られてきた。


どうした?


美海の事でちょっと相談


へえ。じゃ、ライン電話しようぜ


すぐに陸翔と繋がり、画面に陸翔の顔が映った。

「それで、相談って?」

「水川さんのこと」

陸翔の顔がピクリと動いた。

「そのことか。で?」

で?

って、めっちゃ冷めてない?

「で、何?水川さんとデートに行くとか?」

「そうだけど。誘ったんだけどね」

俺はかくかくしかじか説明した。

「そゆこと。じゃ、この陸翔様が―――」

「あ、いい。でさ、どう思う?」

「いんじゃね?」

軽いなぁ。ま、そういうところが陸翔なんだけど。

「ならいいけど」

陸翔はヘラっと笑うと、電話を切った。

何だか大変なことになりそうだけど、何だかんだ言って、楽しみだなぁ。

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