【太郎&夏子】恋の始まりは湯気と共に。
突然本編から外れますが…
カクヨム誕生祭2021、お題3回目「直観」
をお題に書いております。
皆勤賞目指して書いてましたが、先日の
Androidトラブルで更新できなかった為
皆勤賞逃したので、こちらにまとめます!
本編の更新は暫しお待ちください…
登場人物
稜(りょう)
はるさん(稜の恋人)
太郎(たろう)
夏子=なっちゃん(太郎の奥さん)
この物語は太郎と
夏子の出会いの物語です。
~~~~~~~~~~
はるさんがなっちゃんと出掛けていた為、
太郎と夕食を共にすることになったある日
太郎が突然懐かしい写真を出してきた。
『稜、これみてみ~?』
「ん?写真?あ、これ!
お前の結婚式の時のやつじゃん。」
『そうなんだよ~、夏子に突然これ見せられて、この頃の体重まで戻さなかったら離婚考える!とか言われてさ~?僕ってそんなに太ってる~?どうしたらいいの~?』
最近太郎には俺の相談に沢山乗ってもらっていたしな!ここは真剣に聞いて解決してあげようではないか!
「で、お前さ~今何キロあるんだ?」
『ん?この頃よりプラス20キロだな…』
「死ぬな…このままだと、なっちゃん残して、お前は早死にする…。」
少し脅しといたほうがよさそうだ。こいつからは危機感というものが感じられない。
『え!そ、そうだよねぇ…。僕、病気になったら夏子に迷惑かけちゃうよな…。』
と言いながらビールを片手に
唐揚げを食べている太郎。
やはり、聞いていないようだ…。
「お前、人の話聞いてないよな?とりあえず、唐揚げを食べることをやめてくれ!どうしても食べたいのなら、鶏肉をモモ肉からむね肉に変えてくれ!そして米を抜け!運動して、脂肪を減らせ!」
捲し立てるように話す俺の気迫に圧倒されたのか、最後の一個の唐揚げを掴もうとしていた箸を止めて、俺の顔を悲しそうな表情を浮かべて見つめている太郎。
ダメだ!ここで甘やかしたらダメなんだ!
「太郎?この写真の隣にいる綺麗な女性が今も変わらずに隣にいてくれることを当たり前だとは思わないほうがいいぞ!なっちゃんは仕事もできて、本当美人だからな…離婚!
などという言葉を出してくるということは、本気でお前に危機感を持っているのかもしれないぞ?俺も協力するから、一緒に頑張ろうじゃないか!」
いつもなら、ビールとデザートを追加で
頼むはずの太郎だが、俺の言葉が効いたのか
冷たい烏龍茶を注文して今日は終わりにするようだ。
※※※※※
稜と別れ、一人帰路を歩いている途中
僕は一軒の店の前で足を止めた。
"ここは…"
そう、僕と夏子の始まりの場所。
「『大将!いつものね!!』"太郎ちゃん、あいよっ!いつものスペシャル盛りね!"」
すると注文が終わるのを見計らったように、僕のカウンター席から大将を挟んで裏側の方向より、同じメニューを注文する女性の声がした。
常連の僕は、大将とも顔馴染みであり
"いつもの"という便利な言葉で通じることができていた。僕の知っている限り、他にも常連のお客さんは何人かいたが僕と同じものを注文しているお客さんには出会ったことがない。しかも、女の人の声。
自分が座る場所からは注文の主の姿が従業員に邪魔されて見えなかった為、どんな巨体の女性が座っているのかと興味津々だった。
ラーメンが運ばれてくるまでは。
"大将、今日も美味しかったよ~
またくるね~ご馳走さまでした~"
運ばれてきた、スペシャルラーメンを前に
すっかり興味津々だったはずの女性の事も忘れ、スープまで綺麗に飲み干すと、挨拶をしてそそくさと店を出た僕は、食後のデザートを調達するために立ち寄ったコンビニのアイスクリームコーナーで先程まで忘れていた興味の対象に出会うこととなる。
『ねえ、もしかして…あー名前なんだっけ?政治家にいそうな人!!顔は知ってるのよ!あなたの、顔!!』
アイスクリームを選んでいた僕の隣にきて
突然一人で喋り始めた女性…ん?
この人は…僕も見たことがあるぞ?
「あ、もしかして同じ大学だったよね?」
『そうそう!やっぱりそうでしょ?あの、ミスコンの時、私のとこに推薦きてるから出てくれってお願いしに来た人だよね?いや~さっきのラーメン屋で、何か見たことあるな~?と思ってたのよ!あ、アイス買うの?
私も食べたーい!一緒に食べようよ?』
そう、そうだ。あの人だ。
僕が大学生の時に押し付けられてやっていた
大学のミスコン運営委員会で、やたらと推薦が多かったのに"興味ないから無理!"の一言で相手にしてもらえなかった女性…
名前は確か…雪村夏子さん?
それにしても、先程のラーメン屋で僕と同じものを食べるような女性はきっと巨体な女性なんだろうなと想像していたのにこんな綺麗な人だったとは…。
「アイス、食べれるの?あそこのスペシャルって結構お腹いっぱいになるよね~?」
『え?あなたも食べるんでしょ?それに
デザートは別腹って昔から言うじゃない?
それとも、私と食べるのがイヤなの?』
な、なんか綺麗だけど押しの強い人だな…。
これが、夏子との久しぶりの再会だった。
それから何度か偶然ラーメン屋で出会うことがあり、次第に仲を深めていった僕達は自然と付き合うこととなった。
きっと周りの人達は、なんでこんな綺麗な女性がこのデブと一緒に歩いているんだ?
と思っているだろうなということも自覚はしていたし、自分でも夏子は僕には勿体ないくらいに完璧な女性だと思う。
だから結婚する前に僕は確認した。
本当に、僕でいいの?と。
すると夏子は深く考えることもなく
『太郎?私はあなたと一緒にいてとても楽しいし、幸せなのよ?周りがどう思おうと関係ないじゃない。私の直観が、この人と一緒にいなさいと言っているの。』
とサラッと答えてくれた。
僕の直観も、この人を絶対に手放しては
いけないと言っていた。
そうだ、こんな僕を好きでいてくれて
何十年経った今も一緒にいてくれる夏子を
悲しませてはいけない!
僕はコンビニに立ち寄り、二人が好きな
アイスクリームを一つだけ買うと急いで家路に着いた。
僕の気持ちをキチンと伝えよう!!
「夏子!!ぼ、僕今日からダイエットするから!唐揚げもムネ肉にするし、明日から通勤は一駅歩くようにする!だ、だから離婚だなんて物騒なこと言わないでこれからも一緒にいてくれますか…?」
玄関のドアを開けて、ただいまも言わずに
突然話し出した僕に驚き、キョトンとした顔でこちらを見ている夏子。
『え?太郎、いきなりどうしちゃったの?私離婚するなんて話したかな…、ゴメン覚えてないや!ま、でも運動したり食事気を付けたりするのは凄く良いことじゃないの!私も最近、下腹部のポッコリお腹がどうにもならないのよね~、よし!二人でダイエットするわよ!って…その手に持ったコンビニの袋は何かしら?』
お、覚えてないだと…?
確かにあの時、夏子はワインを一人で
二本程空けていたしその可能性もなきにしもあらず…。僕は真剣に悩んでいたのに!!
でも、本気じゃなくてよかった…。
買ってきたコンビニの袋を夏子に渡す。
中身を見た夏子はアイスクリームを袋から取り出し半分を僕に渡し、出会った頃と変わらない笑顔でこう言ってくれた。
『一緒に食べようよ?』
「やっぱり、夏子は雪見だいふくだ!」
『どう言う意味よ?』
「雪の様に白い肌、ずっと
変わらない味みたいな?」
『何それ?稜君に影響でもされた?!』
二人でソファーに座り並んで
アイスクリームを食べる幸せ。
夏子?僕は直観していたんだよ?
二人の未来を。
湯気が運んで来た恋の未来をね…。
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