温泉

青バラ部屋の三人は部屋に届けられた各自の荷物箱を開封し、明日の入学式に備えて部屋を片付けた。

「ふぅ~こんなところかしらねぇ~」

「冷暖房の位置も使い方も覚えたし、あとは寮の全体の把握かな?」

「汗もかきましたし、大浴場に行って長旅の疲れでも取りましょうか?」

「いいね!」

牧の提案に月と望が乗る。


青バラの部屋を出た3人がタオルとバスタオルを片手に寮内着姿で大浴場に向かった。

大浴場に向かう途中、共有スペースであるラウンジ・ロビー・食堂を通り抜けていく。

そこには3人と同じくウサ耳付きのホワイトボアーのセパレートタイプの寮内着に身を包んだ女子兎高等学校白兎寮寮生達が大浴場に入浴する前の語らいのひと時を過ごしていた。

「お!やっぱりみんな着ているねぇ、寮内着!」

「すごーい…白いウサギさんが沢山…」

「文字通り“白兎寮”ね。仮装大賞のエスコートガールの衣装を寮の部屋着として着れるんですもの。私たちにとって願ってもないことだわ!」

「確かに!」

「お、着いた!」

3人は大浴場の入り口に立った。

大浴場の作りは純和風の温泉施設そのものだった。

(地元の温泉施設で見た光景だー!)

「ん?」

牧が心の中で突っ込むと、入り口の脇には「本日は「つなぎ温泉の湯」でお届けします」と立看板に書かれてあった。

「つなぎ温泉…?」

「盛岡の有名な温泉がどうして?」

3人がまじまじと立て看板をのぞき込むと、

「それはつなぎ温泉からタンク車によって源泉から直接お湯を汲んで運び入れているからよ!」

「!!」

横から割り込む様に説明を入れたのは、同じく寮内着姿のベージュ色のストレートロングヘアーと水色のショートボブ、黒髪掻き分けロングヘアーの3人組だった。

「貴女は!?」

「これは失礼。私達はユーカリ部屋の好摩こうま佳美よしみ大更おおぶけ聡美さとみ平館たいらだて道那みちなと申します」

「あれ…?牧ちゃん…?牧ちゃん…だよね…?」

「え…?道那ちゃん…?あんやほに!久しぶり!道那ちゃんも女子兎高等学校さ入学したんだなはん!?」

「うん!小さい時に2人で約束したでしょ?“2人でバニーガールになろう”って!」

「覚えてくれたんだ!嬉しい!」

突然の再会に牧と道那は抱擁する。

「あの…2人とも…」

「あ、すみません、紹介しますね。こちらは私の小学4年生まで私の友達でした平館道那ちゃんです。こちら私と同じ部屋になった先輩の…」

「春木場望と申します」

「赤渕月です」

「改めましてユーカリ部屋の1年生、平館道那15歳です。牧ちゃんとは小学生の同級生で、4年生の秋に雫石町から盛岡市の小学校に転校して以来でした」

「ユーカリ部屋の先輩のお二方へも、私は道那ちゃんの小学生時代の同級生だった雫石牧と申します。部屋は青バラ部屋ですので春木場、赤渕先輩共々よろしくお願いします!」

「こちらこそよろしくね。小さいウサギちゃん」

青バラ部屋、ユーカリ部屋双方の挨拶と自己紹介を済ますと、お互いに笑みを返した。



白兎寮大浴場

日帰り温泉施設をそのまま持ってきたような100人は入れるかもしれない広々とした内湯と奥羽山脈から吹き下ろす風が入り来る露天風呂の2種類の風呂があった。

その片方の露天風呂に6人は浸かっていた。

「ああ〜温泉はいい〜」

「なんでも地元の温泉を日替わり、ローテーションで汲んで運んで沸かしてくるみたいですって」

女子兎高等学校ココってどれだけ凄いんですかね…」

「沸かし湯とは言え露天風呂のある学生寮なんて日本では女子兎高等学校ウチだけでしょ?」

「お風呂があるだけでも助かります〜ましてや温泉のお湯を汲んでくるなんて生徒の身体のケアを考えていますね…」

「これが温泉王国、岩手県のお湯なのね…」

「源泉かけ流しでないのが惜しいですが、これだけでも効能ありそうな…」

「これから毎日どんな温泉のどんなお湯が入ってくるんでしょう…」

女子寮に作られた岩手の名湯に癒されながら、6人はこれからの日々と牧と道那の再会に胸を躍らせる。

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