第40話 『るー、バッサリ髪切って来たけど。なんかあったん?』

『るー、バッサリ髪切って来たけど。なんかあったん?』


 その、晋からの電話は。

 俺がるーの帰国に合わせて電話をしたい思うてる時に、かかって来た。


「…バッサリ…」


『うん。すげーモテ子ちゃんなってる。』


「……」


 ほら…な。

 みんな、気付いてもうたやん…

 るーの可愛さに…


 って、そんなんは置いといて…


『何があったんか知らんけど…まあ、行く前と帰ってからのるーの表情の差とか髪型とか…指輪とかで色々察するに…別れたん?』


「…俺、こっちで事務所の先輩とおるとこ写真に撮られて…」


『あー、見たで。『Rock Life』に載ってたやつな?』


 ああ…やっぱそっか…みんな見てるんやな…


『けど嘘やろ?』


「デキてはないけど、世話になってる先輩で…一緒におるとこ、るーに見られて…」


 晋の『あちゃ~』て小声が受話器から聞こえた。

 それは、今思えばあの瞬間の俺の声にも思えた。


『で、るーが怒った…と。』


「怒った…」


 るーは…怒ってたか?

 確かに、目は俺を睨んでた気がするが…

 …悲しそうな顔してた気がする。


「俺、アホやねん…」


『知ってる。』


「…即答すんなや。」


『いや、けどホンマやし。』


「………」


 年下の幼馴染は、容赦ない。

 けど今は…それがちょうどええ気がした。


「会いたい思うてたけど、俺としては…二年。二年、こっちでがむしゃらにやって…って思いでいただけにな?その…その場におらへんはずのるーの登場に、サプライズ言うより『なんでここに?』って戸惑いの方が大きくて…」


『あん?女といた事、弁解とかせぇへんかったん?』


「それどころか…歓迎するような事も言えへんかった…」


『うわー、そら会いに行った身には堪えるでー。』


「…せやな…」


 改めて、あの日の自分を悔いる。

 勝手に二年待って欲しい思った俺。

 会いたい思って来てくれた、るー。

 俺らは同じ想いでおったはずやのに…温度差も距離もある。



『実はな、俺らのバンドに、るーがゲストで入ってん。』


「…はっ?」


『文化祭に出よって事で。』


「…えーと…」


『るー、バイオリン弾けるやん?』


「………」


 バイオリン…バイオリン?

 昔はやってたけど…て聞いた事あったで。

 けど、バンドでって…


『ホンマは去年文化祭出るはずやったけど、なんか廉とケンカして…』


「…廉?」


 バンド加入とバイオリンが、頭から抜けるぐらい。

 その『廉』て名前が、俺にとって嫌な存在な気がした。


『うちのボーカル。今、るーと同じクラスやねん。』


「……」


 俺が黙ってまうと、晋は何かを察したんか。


『…ま、ぶっちゃけ…るーに惚れてる思うで。廉。』


 低い声で言うた。


 そして、俺は…



 めちゃくちゃ焦った。




 …るーも。

 記事を見た時…


 こんな思いをしたんやろか…。

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