第29話 それはそうとウチの妹が可愛い

「う〜ん………ぅお?」


なんとなくぼんやりと目が覚めた。


「んあれ?ここは……」


知らない天井。

どうやら僕は仰向けになっているみたいだ。

ゆっくり頭が覚醒していく。

たしか千堂さん家から帰ってきてから………


“じゃっじめんと!”


はっ、そうだ。たしか真由の‘じゃっじめんと’という言葉とともに気を失ったんだよな……。

じゃっじめんとってなんだ?

そんな疑問を持ちながら、ガバッと起き上が

……ろうとしたけど、なんか右腕に違和感があってうまく起き上がれない。

右腕の方を見ると……


「すふ〜〜」


寝息を立てながら仰向けですやすや眠る真由の姿が。

あら可愛い。

じゃなくて!

なぜに真由が?

色々聞きたいことがあったので、とりあえず起こそうとすると……


パチリ


急に真由の目が開いた。


「うおっ」


「ごみいちゃん……」


「その呼び方、お兄ちゃんとても傷つくよ」


「しつれい、かみま……くぅ」


「そこで寝ないで!最後まで言って!」


「まゆ、とても、ねむ」


だめだ、まだ寝ぼけてるみたいだ。

再び目を閉じて、頭をすりすりと擦り付けてくる。

小動物みたいだ。

なんかかわいい。


パチリ


また急に真由の目が開いた。


「どうした?」


「可愛いって言われた気がして」


エスパーか。


※※※


そのあとなんだかんだあって



「それで、どうして一緒に寝てるんだ?」


たしかに真由が小学校中学年くらいの時までは一緒に寝ていたりもしたけど、

それからは一緒に寝ることなんて滅多になかった。

心霊番組を見て、夜一人で眠れないって時は一緒に寝ることもあったかなぁ。

え?誰が心霊番組を見たかって?


僕だ。


ちくしょう、怖いのに何故か見てしまう。

どうしてあんな絶妙なタイミングなんだよぉ。

まるで誰かが仕組んでるんじゃないかと思ってしまうような。

いつも誰が番組を録画してるんだよ……。

おっと、話がずれた。

それで真由の返答は……?


「罰なのです」


抱きついたままの真由が言う。

さっき腕が痺れたと言ったら、下に下がりぐるっと向きを変えて抱きついてきた。


「罰って……何の罰?」


「……」


なぜか答えようとしない真由。


「真由?」


真由の方を見ると


「すー、ふー、すー、ふー、すーふー、すーー!ふ、すーーー!………」


目を瞑って一生懸命寝たフリをしようとする真由の姿が。

全力で寝たフリをしようとしているからか、もう最後の方はただ息を大きく吸い込んでいるだけのようにも感じられる。


「真由ー?、寝たフリなのは分かってるぞー」


「すー!すーー!すーーーーー!」


「ちゃんと呼吸をしろ!」


慌ててひっぺがす。


「はぁ、はぁ、はぁ」


息も切れ切れだ。言わんこっちゃない。


「……すーー」


「戻るな!」


危ない危ない。


「それで、結局罰ってなんなんだ?」


「……だって、お昼で終わるって」


「お昼……あ」


千堂さんのとこでお昼を食べて帰るとは言ってあったけど、なんだかんだで夕方になってたんだよな。

一応遅くなるって連絡はしておいたんだけど。

そういえば……いつも僕のテストが終わったら、真由は帰ってから一番に僕の部屋に来てゴロゴロしてたっけな。


「……それでも寂しいの」


「そっか……」


「友達ができたのは、嬉しいけど。分かってるけど、でも、寂しいの」


「うん、ごめんな」


謝罪の気持ちも込めて、ぎゅっと抱きしめ、優しく頭を撫でる。


「えへへ」


あーーーーーー。

これだからうちの妹はぁぁ!






「ところでおにいちゃん」


「ん?」


「なんでおにいちゃんから他の女のにおいがするの?」


ピタッ。

頭を撫でていた手が止まる。


「ねぇ、おにいちゃん?」


手を掴まれて強制的に撫でるのを続行させられる。


「あ、あぁ、それはな」


最近真由から時々感じる圧を受けて怯む。

だけど別に、何もやましい事はない。

はっきり答えよう。

きっとあの事だ。

そう、普通に膝枕されたと話せば……

普通に………

いや、これ普通じゃないんじゃない?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る