第25話 衝突

「―――ッらぁ!!」


 強靭な脚で看板を蹴り一気に飛び掛かったオレは、拳に炎を纏わせ瀬奈を勢いのまま殴り付けた。


「くっ――――!」


 咄嗟に何かで防御した瀬奈は、その衝撃から後ろに下がっていた。

 だが、第二の攻撃に瀬奈は気付かず、そのまま爆心地の中心に向かっっていった。


「爆ぜろ、炎の巌鱗!【爆塵拳】!!」

「――――!?」


 瞬間、瀬奈の周囲から突然の爆発が起きた。

 瀬奈はまたもや何かで防いだが、その爆発の威力は凄まじいものだ。


 オレの鱗は発火成分の高い爆薬が含まれていて、その爆発力はあのTNT爆弾の原材料であるトリニトロトルエンの約3倍ほどで、高温で蓄熱されるほど爆発力は増幅される。


 それらを体内のマナの効果で蓄熱させ、勢い良く振り抜くことで、鱗の表面が舞い上がる。


 外界の空気に触れることでそれらは一気に炸裂し、さっきのような爆発が起きる。

 当然火力はTNT爆弾の三倍以上であるため、直撃すれば生身だと木端微塵になるのは必須だと思う。


 現実世界でこんなの使ってしまえば、看板はおろか船すら木端微塵になってしまうからな。

 虚数空間さまさまだぜ。


 さて、瀬奈はどうなってる?


「―――――――――。」


 煙が晴れた後、瀬奈の両目から血が流れ出ている。

 近くには目のような盾がいくつも浮いていて、それらがいくつかひび割れていた。

 おそらく、さっきの防御はこの盾によるものだろう。


「姉さん!」

「大丈夫だ、絵里。―――目の一つや二つ、なんてことねぇ!!」


 そういうと瀬奈はひび割れてない盾を目に押し当てた。

 その直後、盾が粒子状となって消え去り、目は完全に元に戻っていた。


「面白い能力だな、どんなからくりだ?」

「てめぇに教える筋合いはねぇ!!!」


 瀬奈がそういうと、浮遊した盾からビームが放出され、オレの身体を掠めた。

 軽く言うが、すっげぇ痛い。

 てかマジでどういうギミックしてんだ。


「余計な隙は与えさせねぇ!!絵里、虚影刃用意!」

「はい、姉さん!アイズ・レイ逐次投入お願いします!」


 ―――と、これはまずい。

 逃げるが勝ち!


「お、おい―――あーれー。」


 くっついてるマイヤごとオレは翼をはためかせて上空に逃げた。


「どこに逃げても無駄だ!」「この世界にいる限り、私の影は貴方を捉えます!」


「「私達姉妹から、逃げられると思うな!/思わないでください!」」


 そういうと、絵里の陰から黒い衝撃がこちらに飛んできた。

 それと同時に、さっきのビームがいくつかこっちに飛んできた。


 空中で始まる唐突なドッグファイト。

 ビームと衝撃を躱しつつ、オレは口内で生成した火の玉を撃ち出した。


「そんな攻撃!」「何ともないぜ!」


 あっさりとビームと衝撃波で火の玉を撃ち落としていく二人。


 うへー、どうすんだこれ。

 よけるしかない、かといって攻撃したら攻撃が撃ち落とされる。


 マジで気を抜いたら死ぬのでは?


【そうだぞドレイク。あの二人に対抗するにはそれなりの覚悟を示すがいい。】


 マイヤがこう言ってることだし、慢心油断が死を招く修羅場ってことは分かった。

 でも戦わないといけないんだよなぁ…


 ―――もういいや、どうにでもなれ。

 本気にさせたのはそっちだ、何が起ころうとも自己責任だ!!


「んじゃあ、あんたも覚悟しろよ当主様!!!」


 幸いにもマナは十分に満ちている。

 あの姿になるのは気が引けるが、【】を示せるのなら結果オーライだ!


「―――■■◆■■◆◆◆▲▲◆◆■■ォォォ!!!!!!」「うわすっごい熱い!」


理性を捨てて、過剰発生したマナを強制的に順応させる竜の真髄、それが抑制解除リミットオーバー

身体能力や熱量を許容範囲以上を超えて、本能のままに行動する。

まさに獣と言うべき状態となれば、この暴走状態を解除するのは至難の業だ。


荒ぶる竜はここにある。

大いなる暴虐は姿を見せる。


―――火星の名を冠した竜は、今こそその真価を発揮する。

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