ディメンション・レコード~大剣の男は狐の美女と毒舌AI美少女と供に異次元戦記を織り成す~

フィオネ

この世界達とは

第1話 世界を超えるのは

 あの時のことを今でも鮮明に覚えている。


 家族で並ぶ食卓。


 母が作ってくれた料理。仕事の話を誇り高く話す父。そしてそれを聞いて笑顔を見せる妹の『トワ』。


 本当に嫌というほど覚えている。






『あらあらあなた、家に帰っても仕事の話。しょうがないんだから』


『いいだろう。世界の壁を超える技術。それを人の英知が成し遂げたんだ。お前にも見せてやろうか、トワ、異世界の写真でも』


『わーい!! すごく幻想的!!!! 夢の世界みたい!! 兄さんもそう思うでしょ!?』


『あぁ、そうだな』


 俺はそう言って微笑みながら言葉を返した。俺の名前は『クオン』。少々目つきが悪いが、至って平凡な男だ。


 周りにいるのが父と母と妹。


 机をまたいだ先には、厳格に見えて実は楽観的な研究家の父、いつも笑顔を振舞いて慈悲深くたまに怒ると恐ろしい母の二人がいる。


 そしてそこに座っているのが、妹の『トワ』だ。目つきが悪いのが似てしまったのがたまに瑕だが、それは父の遺伝の性だ。十分にかわいく、美しい女の子である。


 何度も言うが俺は普通の男だ。朝起きて学校に行き、たわいもない喧嘩をして、授業を受けて、帰ったら、親に怒られ、そして楽しい家族との団欒だ。普通だが、それが本当の幸せだったと思わされる。


 だが父が仕事で行っていた次元を超えるという技術とやらは、その幸せをあっさりと打ち砕いてしまうことになる。







『な、なんでこんなことに!?』


『あなた、これって!?』


 だがある日のことだ。いつものように家族で食卓を囲ってご飯を食べていた時であった。


 突如として空間に『奇妙な渦』が出現していた。その様子に父はひどく困惑し、俺と妹は唖然としていた。そしてその渦の中から、見たこともない虎のような怪物が現れたのだ。


『ひ、なんだこれ!?』


『お、おにいちゃん!?』


 俺と妹、母と父はそれぞれ両端へと別れて、壁に張り付く。見たこともない生き物だが本能的にやばいと分かっているのか、体中から震えと汗が止まらなくなっていた。


 怯える最中、父は顔色を青くして何やらぶつぶつと呟いている。


『なぜだ!? なぜこの渦がここに!? まさか無作為に空間を開けすぎて、不安定に……』


 父がそう言葉を発していたその瞬間、虎の化け物は父の横にいた母に飛び掛かった。


「あ!?」


 叫び声はほんの一瞬、虎の腕の一振りで、母の腹が引き裂かれた。そして母はそのまま虚ろな表情を浮かべ始めた。


『う、うおああああ!!!!!』


『い、いやぁああああ!!!!』


 妹と俺はあまりの衝撃に絶叫を上げた。そして横にいた父も顔が切り裂かれてしまったらしく、頭から大量の血がどろりと垂れてきていた。


『お、お前たち逃げろ!! 早く早く!!』


 父はボロボロと涙を流しながら、そう俺達に訴えかけた。


『い、嫌だよ。父さんもに、逃げなきゃ!!?』


 しかし、父は妹の言葉とは真逆の行動をとり、その虎の化け物にしがみついた。


『お、俺のせいなんだ。ここ以外もあぶないはやくはや、がかぁ!!!?』


 父はなぜか謝罪の言葉をかけながら俺達に逃げろという。しかし言葉の最中、父の首はざっくりと引き裂かれた。


『と、父さん!!!!!』


『あぁあああ!!!!!』


 俺はすぐさま叫び声をあげながらも妹の手を取って、家から逃げ出した。ぼりぼりと両親の体を貪る音を聞きながら。



『兄さん!!!! お母さんが!!! お父さんが!!!!!』


『いいんだ。振り返るな!! 早く逃げるんだぁぁぁ!!!!』


 俺は家の部屋から脱出すると、辺りからは既にサイレンが鳴り響き、断末魔の叫びが聞こえていた。


『ひぃ、やめ、がごぉ!!?』


『ぎぃがやあああ!!!??』


『きゃきゃきゃかや!!!!』


『ォォオオオオオオ!!!!』


 その他の家の壁が崩れ、電信柱はへし折れ、車は木っ端みじんに破壊されている。そして肉塊になった人々が血溜めを作っていた。


 そしてなにより目を疑ったのは、空間の様々な所に『奇妙な渦』が現れていることだ。そしてそこから異形の者達が溢れかえっていたのである。


『な、なんだこれは!!?』


 皆が創作で知るドラゴン、悪魔、吸血鬼、不死鳥、エルフ、ドワーフ。様々な創造上の生物が現実へと現れて、人を食っていたのだ。


 まるで意味が分からず、本当にここが現実なのかと呆然としてしまう。俺は先ほどのことも思い出し、恐怖と絶望と怒りと悲しみが全身から押し寄せた。


『ね、ねぇ兄さん。これって夢だよね。さっきお父さんとお母さんが赤くなってたけど、ゆ、夢だよね』


 手を引いていた妹も涙をボロボロと流して、気を失いそうになっていた。だが俺も妹と同じ気持ちだ。本当に現実味がないのである。


『あ、あぁ。こんなのが現実であってたまるか』


 俺がそんなことを言った瞬間、辺りから翼を生やした蛇のようなものが俺と妹に襲いかかってきた。


『ぐあ!?』


『あぁ!?』


 俺は頭を妹は両足を噛まれてしまう。そして俺も父と同じく頭からどろりと血が垂れた。


『う、うわあああ!!?』


 俺は必死にそれらを薙ぎ払い、妹に噛みついたその蛇も踏み殺した。


『だ、大丈夫か!? トワ』


『足が、う、動かない。あぁ』


 妹は今受けた傷のせいでそのまま地面へと座り込んでしまう。そしてまた大粒の涙をボロボロとこぼし始めた。


『あ、あたし死んじゃうのかな。うふふ、父さんと母さんみたいに、食べられちゃって、あははは』


『そんなことさせるか!!!??? お、俺が背寄ってやる!!! 行くぞ!!!!!』


 俺は座り込む妹を抱え込み、そして思い切りダッシュした。


『うぐぁ、ああああ!!!!』


 顔の表情がボロボロに崩れてしまう。


 汚らしく涙を流し、苦渋の顔を浮かべながらも、走った。


 目の前から来る化け物たちを避けながら、攻撃も喰らいながら、血反吐を吐きながらも、走った。


 父と母の食われた瞬間が何度もフラッシュバックしながらも、走った。


 走った走った走った。


 何処かに安全な場所があるはずだ。


『い、いやぁあああ!!!?』


 しかし、その瞬間背中に違和感を覚える。


 がくんと重みが走ったと思えば、途端に背中が軽くなる。俺はすぐに背を向ける。すると翼竜に妹が文字通り鷲掴みにされていた。


『てめぇ!! はなせ!!! このやろう!!!!』


 俺は無謀にもその翼竜の足にふん掴まり、妹を死に物狂いで取り返そうとした。だが翼竜も俺を振り落とそうと暴れまわった。、体力も消費していた上に、その力はすさまじい。空中に少し浮かんだ場所で、俺はなぎ落とされた。


『がはぁあああ!!?』


 地面にあった瓦礫の破片にぶつかり、そのまま俺の脇腹をえぐった。うめき声が出て、振動で頭が割れそうになる。


『兄さん!!!!!!!』


 俺のその様子に妹の叫び声あげた。だが俺の目の前がぼやけていき、視界が狭くなっていく。


『ぐがかあ……』


 打ち所が悪すぎたのか、声も出しずらくなってきた。もはや手を空に向けるだけで精一杯だ。そしてまた空間に浮かぶ渦が妹と翼竜の前に現れる。


『がおぉおお!!??』


『や、やめぇ!!! 兄さん!!!!!!!!』


 トワの叫び。それが最後の声に聞けた声であった。


 その声を最後に、トワを巻き込んだ渦は消え去った。そしてそれを起点とするように、周りにいた怪異たちは周辺に現れた渦に飲み込まれてそのまま消えていった。





 俺が住んでいた町で起こったこれは、次元トンネルという空間転移システムが誤作動をして招いた悲劇だった。父はそこの研究員としてそのシステムに携わっていたのだ。父が直前に謝っていたのはそのためだろう。


 その事件で多くの者が死に、多くの者が消え去り、多くの者が嘆き、絶望した。俺もその犠牲の一人だった。


 俺はこの後、駆け付けた救護隊に救われ、一命をとりとめた。だが目が覚めても父も母も、そして消えた妹もいなかった。




 そして俺は紆余曲折を経て、妹探しのためにある特殊な軍隊へと入団することになる。次元トンネルにより起こる弊害を解決する軍隊に。


 まぁその後、その組織を裏切り、開発されていた武器も奪い去ることになるのだが、それはまた別の話だ。




 今か語ったのは、俺の身に起こったどうしようもなく理不尽でマヌケな昔話さ。









★★★★★★★★★★★★












「な、なんだ!?」


「ドアが破壊された!!?」


「バカな!!? 守備部隊はどうしたのだ!?」



 ある研究施設。


 そこでは至る所からサイレンが鳴り響いていた。通路にある壁は破壊され、武装した警部兵たちや警備のロボットたちが床に倒れ伏せている。


 そしてある部屋の一角。そこで大きな破壊音が辺りを包み、入り口にあった大きな鋼鉄の扉が、真っ二つに分断されてぶち壊されていた。


 部屋の中にいた白衣を着た研究員たちは、その衝撃に慌てふためいて、声を上げている。その部屋ではなにか重要な研究をしていたらしく、顔を見上げるほどの大きな画面とパソコンもいくつも並んでいた。


 その部屋の前に立つのは、ある謎の二人組だった。


「おおきにクオンはん。扉を開けてくれてありがとさん」


「そりゃどうもミナリさんよ」


 一人は少し目つきが悪い男。黒ずんだ灰色の鎧を身に纏っており、両手には身の丈を越える馬鹿でかい大剣を持っている。そして奇妙なことに、その大剣には木の根のように発光するラインが通っており、その鎧にも同様のラインが全身に通っている。


 その男の傍らには京都弁を話す妖艶な女性が佇んでいた。きれいで美しい白髪を持ち、スタイルも抜群。そして彼女は巫女装束を身にまとっており、長い黒刀を得物にしている。


 だが驚くべきことにその女性の頭には狐の耳、そしてお尻には狐の尻尾が生えていた。


『クオン、まだ終わってはいませんよ。ここからが本番です』


「けっ」


「クオンはん、しょげへんの」


 その時会話に被せるように、電子音が入り交じった女の子の声が二人の耳元へ響いた。ただそれを発しているはずの声の主の姿は一切見えない。


 しかしながら男女の二人組はその不審に思える謎の声について特に気にもせず、会話を交える。


『気を引き締めてくださいの意味ですよ、クオン。ではミナリ様お願いします』


「了解やフィオネちゃん」


 二人の耳には小型のデバイスがひっかかっており、電子音の女の子の声が響く度に、そのデバイスはチカチカと発光しているのが分かった。


 そしてその『フィオネ』と呼ばれた女の子の言葉を受けて、狐の女は服からクナイを取り出す。




「必殺!! 狐の毒クナイ!!」


 狐の女は入り口が解放された瞬間、間髪入れずに手元に隠していたクナイを高速で彼らに投げつけた。


 そのあまりにも素早い攻撃を当然ながら中にいた者達は一切避けられず、体に突き刺さってしまう。しかもそのクナイには即効性の毒が塗られており、突き刺さった者たちはすぐにのたうち回り、泡を吹いて気絶した。


「お前、まだ必殺技をいう癖が抜けねぇのかよ。ただ毒塗ったクナイ投げただけだろ」


「必殺技を言ったほうがかっこいいやんか。ヒーローもんでは当たり前やで!!」


「俺たちはヒーローじゃない」


 下らない会話を繰り広げながら、二人は部屋にいる全員が気絶したことをを確認すると、中へと侵入する。


「馬鹿でかいなぁ……」


「そうやねぇ」


 部屋に入って間も無く、彼らは部屋の中央にあったあるモノを見てそうつぶやく。


 二人の目の前にはとてつもなく巨大な渦上のものが浮かび上がっていた。そしてその周りを囲むように、機械が張り巡らされている。


「異なる次元、異なる世界を繋ぐ橋、『次元トンネル』。本当に胸糞わりぃ」


「とは言っても、今のウチらには必要なもんやろ? さぁ、『内側』の邪魔者はいなくなったし、準備を始めるわ」


「あぁ、頼む」


「これからウチはフィオネちゃんと目的地の『次元トンネル』に繋ぐから、今度は『外側』の邪魔者の足止めよろしゅうに」


「あいよ」


 男は気だるそうに返事をしながらその大きな渦を背にし、ぶっ壊した扉の方に体を向ける。


 外からはガチャガチャと金属擦り減る音がしており、クオンは俯きながら大きくため息が漏らした。


 そして彼が次に目の前を見据えると、そこには武装をした人型の警備ロボがずらりと並んでいた。小型の奴もいれば、大型の巨大な奴もいる。男が軽く呼吸を整えると、鎧の通る全身に通っていた光のラインが青色に変わる。


「まるでゴキブリだな。気持ちわりぃ」


 続々に湧いてくるそれらを見て、めんどくさそうに愚痴るが、そんな彼の口元は少し歪んでいた。


「旅先までの最後のウォームアップだ。ストレス発散にまたぶっ壊してやるよ!!」


 男はそう言うと、持っていた大剣の刃の側面をコンコンと手の甲で叩いた。呼応するように大剣に通る光のラインも強く発光した。


「調子は良し。じゃあいくか……」


 彼なりの合図なのか、自らの準備が整うとそのまま高速の勢いでそのロボットたちに突っ込んでいく。初めに狙うはデカ物、人間離れした跳躍を見せると、上から下へ大剣を一刀両断する。


『ぎ、ぎぎぴいぃい……』


 大剣はめり込み、機械による断末魔をあげながら一瞬にして大破した。


「おらよぉおお!!!」


 そして後は雑魚の排除。銃火器を武装はしているが、それらの攻撃はそのすさまじいスピードで避け、さらには大剣を使ってガードしつつ、敵対する警備兵をも盾にしていた。


 圧倒的な数の差など物ともせず、文字通りの無双の戦いを始めたのである。






『まったくカッコつけてるのはどちらでしょうね。こっちは解析で忙しいのに』


「まぁ、そう言わんの。クオンはんがいないと、ここでゆっくり作業できひんやろ?」


 一方で狐の女たちは研究員たちが使っていたパソコンの前に立ち、ある準備を進めていた。まず狐の女は耳につけられた小型デバイスを取り外し、そして目の前の機器の一つに取り付けた。


『接続完了。検索を開始します』


 小型デバイスが取りついた機器から少女の電子音が響く。そしてそれと同時に機器の画面が自動に動き始める。それを確認すると狐の女は別の画面の前へと移動して、いくつも並んでいるキーボードを操作し始めた。


 ただ、操作はほんの数分。ある画面を表示した瞬間、狐の女は安堵の表情を浮かべた。


「ふぅ、二人で探したらあっという間やね。もう見つかったわ」


『いえ、ミナリ様のお力があってこそです。目的地までの次元座標を算出できました。3.5秒後、次元トンネル再生成されます。移動する準備をお願いいたします』


「おおきにな。フィオネちゃん」

 

 彼女たちの一連の作業が終わると空間にあった渦状のものが消滅し、そして再度形を変えて生成された。


 それを確認すると狐の女は大きな機器から小型デバイスを取り外して、再び耳元へとセッティングする。そしてそのまま彼女は目の前に設置された機材を華麗な跳躍で飛び越えて、大剣の男の後ろへと降り立った。




「クオンはん準備は万端どす。次の世界にいけまっせ」


「あぁ、こっちも全部片付いた」


 狐の女が大剣の男の側に近づくと、周りにはそこらじゅうに機械の腕やら足やら頭やらが転がっており、周りの壁にもいくつかめり込んでいた。


 彼が戦ったのは僅かな時間であったが、この部屋に侵入してきた警備ロボットはなんとすべて破壊されていた。これだけで彼の戦いの凄まじさがわかる。


 しかしながら全部倒したと思っていた矢先、入り口を見るとまた警備ロボットがぞろぞろと現れ始めた。もうこれではきりがない。


「本当に無限湧きしやがる。くそ!」


「心配無用やで。後はうちがやったる。クオンさんそこ、どいといてや」


 狐の女はそう言って服の中からひょうたんを取り出した。だがそれを見た瞬間、大剣の男は一気に顔が青ざめた。


「おいまさか。お、おいやめろ!!!」


「そのまさかどす。ええやないか、ここからはもう帰ってこないやし。燃やしても大丈夫や」


 そしてひょうたんの中身を軽く飲むと、そのまま口を膨らます。男はすぐさま狐の女の後ろへと退避する。





「必殺、『狐の灯火(きつねのともしび)』ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」





 掛け声と共に彼女の口から轟音と炎は発射される。


「あっちぃ!!」


 後ろに退避していた男も声をあげてしまうその熱さ。目の前の警備ロボットたちは炎上し、焼け焦げた臭いが辺りに充満する。その火力はすさまじく、周りのドアなどもドロドロに溶けてしまっていた。


 そんな灼熱に当てられたのだ、当然ながら扉の前までにいた大量のロボットたちは完全に全滅した。たった一瞬の出来事で目の前は焦土と化したのであった。


 しかも後ろの通路まで燃え広がり、後ろにいた無傷な警護ロボットも炎の壁に遮られて入ってこれなくなっていた。


「ふう、これで安心やな♪」


「ったくここまで焼くなよ! 向こうまで燃え広がってるじゃねぇか。下手すりゃこの施設潰れるぞ」


「心配は無用や。こんな大層な研究施設や、消火設備がすぐに発動するやろ。いやぁ最近全然この『狐の灯火』を発動できてなかったから、やりたてやりたくてしかたなかったんや」


「お前なぁ……」


 狐の女の行動に男は頭を抱えて、そして大きな溜息をつく。


「まぁいいや。とりあえず感謝しとく。ありがとよ、ミナリとフィオネ」


「どういたしまして」


『この程度当然です。感謝されても何もでませんよ、クオン』


 二人のいつもどおりの返事を聞くと軽く苦笑してしまう。そして男は目の前の渦を再度見つめた。彼らが向かう先、それは浮かび上がる渦状の中。


 謎の男女が度々言葉にしていたその渦。


 それは異なる空間、異なる世界を繋げる『次元トンネル』と呼ばれる代物。


 それを眺める男は、大剣を握る拳に力を込めた。その様子を見ていた狐の女は男を見て少し微笑む。


「行方不明になったクオンはんの妹、次の世界で見つかるとええな」


「俺の唯一の妹だ。もう手放したくなぇ。必ず連れ帰る!!」


 男はそう言うと、構えていた大剣を静かに肩に担ぎ直した。




「いくぞ!!!!!!!!」




 そして掛け声とともに、彼らはその空間へと飛び込んでいった。

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