第6話ガードナー辺境伯視点

  王女にも困ったものだ!

 この国が滅ぶかどうかの危急の時だと言うのに、雌猫のように男を漁り、貴族士族の連帯を乱すとは。

 今回の件は、カルロが勝ってくれたからよかったが、負けていたら、士族の王家への忠誠心が地に落ちていただろう。


 周辺国の魔獣被害は激烈だ。

 多くの村が魔獣に喰われて滅んでいる。

 防壁のある街や都市であろうと、防壁を打ち破られて全滅しているという。

 多くの難民が、魔獣が襲わない我が国に逃げ込んでくる。

 今はまだ全員を受け入れる事ができるが、直ぐに限界が来るだろう。


 そうなったら、難民に剣を向けなければいけなくなる。

 本来なら魔獣や敵に向けるはずの剣を、不幸な民に向けることになる。

 できればそんな事はしたくない。

 王国の力を結集して、魔獣を討伐したいのに、陛下の腰は重い。

 決して愚かな方ではないが、自国の事を優先される。

 それだけならよいが、一粒種とはいえ、王女に甘すぎる!


 王女を女王にしたい気持ちは分からないでもない。

 だがそれなら、もっと厳しく躾けてもらわなければ困る。

 一国の女王になるのなら、帝王学を修めなければならぬ。

 それが、一番力を入れているのが男漁り。

 次に好きなのが家臣虐めでは、女王につけられるわけがない。


 ここはアンソニー王弟殿下に御出馬願わねばならない。

 後の史家の中には、簒奪と言う者もいるだろうが、男子継承を優先させるだけだ。

 軍と士族の支持は集めた。

 王女を支持しているのは、王女を傀儡にしようとしている貴族だけだ。

 そんな腐れ貴族も、決闘でカルロが勝ってくれたから、多くがこちらに派閥替えをするだろう。


 問題は魔獣対策だ。

 いつまでも不思議な護りに頼っているわけにはいかない。

 いや、不思議ではないだろう。

 恐らく伝説の聖女が我が国に住んでいるのだ。

 聖女は絶対に護らねばならない。


 王女をはじめとする貴族士族の乱行や、国や貴族の失政で死なせるようなことがあれば、人の世そのものが滅んでしまう。

 王侯貴族士族の行いを正し、仁道を持って国を治めなければならない。

 それができるのはアンソニー王弟殿下だけだ。


 王家の事はそれでいいとして、問題は難民の受け入れだ。

 これにはガルシア男爵家の協力が必要不可欠だ。

 元が大商人のガルシア男爵ならば、我々が思いもよらない解決策を教えてくれるかもしれぬ。


 それに聖女を探し出すのも、ガルシア男爵に相談しよう。

 我らが動けば、王女や大貴族が聖女の事に感づいてしまう。

 あの王女と大貴族では、聖女を敬わず、嗜虐心を満たすために嬲り殺しにしてしまうかもしれない。

 なんとしてもガルシア男爵に協力してもらわなければならぬ!

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