蒼炎のカチュア

黒桐涼風

オープニング1 蒼炎伝説の始まり (修正版2)

 ユグドラ歴千百二十九年。

 蒼黒戦争 終戦。




 これは戦争だ。

 目の前にいる大軍は人ではない。人というべきなのはただ一人。

 それは血の繋がりはないけど、私の兄メリオダス。そして、倒すべき敵。

かつて、優しいかった兄は今ではこう呼ばれている。【ネクロマンサー】または【厄災】と。


「敵軍は、骸骨兵だけでも、軽く万を超えます。あとは竜兵がいます。目視できる範囲内ではありますが約十体となります。……いかがなさりますか? シェリア殿」


 私の蒼い髪と瞳が、蒼い炎のように、燃え上がり。

 兵たちのほうに振り向く。大きく深呼吸をし、一軍の将として激励の言葉をかける。


「皆のものー! これが最後の戦いになる。ここで破られたら、私たちの大切な人たちが、無惨に虐殺されてしまう。この戦いは絶対に負けらない。私たちの祖国を守るため、たとえ自分の兄でも私は兄を討ち取る!」


 本来なら両手ではないと持てない自分の背丈以上の大きさもある二本の大剣を片手ずつ構える。


「進軍せよ!!!」


 将軍という立場だが、前線に立ち、敵陣に向かう。

 目の前にいる敵を次々と斬りつける。止まることはない。

 空から剣のような形をした黒い物体が雨のように降り注ぐ。


 『ぐわわわわわ!!!』と兵の悲鳴は聞こえるが私はただ進むだけ。

戦いに犠牲者は付きもの。それは割り切っている。けど……。いや、これ以上の犠牲者を出さないためにも、兄を倒す。

 目の前にドラゴン呼ばれている【魔物】が現れた。十メートル以上の大きさがある。そんな相手でも突っ込み、私の剣技でドラゴンの体を真二つに斬りつける。

 かなり無謀に敵軍に向かっているように見えるが、私もただ突っ込んでいるわけではない。


「蒼い炎はこんな使い方もできるのよ!!」

 

 勢いよく飛び右手に持っている蒼い炎が大剣を包み、それを地面に突き刺す。そして、忽ち私を中心に蒼い炎が燃え上がり、骸骨兵が砂のように崩れていく。


「はあー、はーあ、はーあ……」


 大分、無茶をしたかな……息が……荒い……。しかしここで立ち留まるわけにはいかない。再度、掛け走り、邪魔するものを斬りつける。

 そして、ようやく、兄の目の前に立つ。


「……兄さん」

「久しぶりだな」

「兄さん。一つだけ聞かせて。なぜこんな戦いを・・・。あんなに優しかった兄さんがなぜ?」

「お前には関係はないことだ。血の繋がりはなくともお前は俺の妹。だが、俺の邪魔をするならたとえ妹でも容赦しない」

「仕方がない……なら」


 私の全身から蒼い炎が燃え上がる。


「私が兄さんを殺す!」

「殺せるならな。お前の蒼き炎のせいで俺の【勇能力】はなくなった。しかし、俺にはまだ【ネクロマンサー】としての【魔術】の力がある」


 兄は腰に掛けてあった鞘から禍々しい黒い煙を纏った剣を抜き、私に向かって突き刺すがそれをかわし、素早く斬り下ろすが、兄も剣で受け止める。それからは素早い剣と剣の激しくぶつけ合う。とにかく、兄には【魔術】を使わせる余裕を作らせたりしない。


「ぐう、強い……だが」


 兄の左手から黒い球を放つ。

 私の左手に持っていた剣で受け止めたが剣は弾き飛ばされて空高くまで飛ばされていた

 やはり私の兄。【魔術】の発動が早い、しかし。

武器を一本飛ばされたからといって私はそれに動じない。兄に剣を向ける。

 再度、剣と剣のぶつけ合いだ。そして。

 これでけりを付ける!

 少し後ろに下がり、兄の懐に入り剣の先を向けが兄は私に向かって振り下げようとする。


「終わりだー!!!」


 この時、兄は自分の勝利を確信したと思われる。

 そして、決着を着いた。


「バカな……」


 私の剣が兄の胸を貫いた。

 兄の剣を持っていた右腕が地面に落ちていた。私の持っていた剣のうち一本は兄によって弾き飛ばされてしまったが、あれはわざと手放したものだ。私は一騎打ちで飛ばされていた剣に視点を向かわせず私に気を取られていたため。

落下した剣が兄の右腕を切断。

 兄の腹に刺さった剣を抜き、兄は後ろへ倒れる。


「……兄さん、ごめんなさい、こんな方法しかなくって」


 倒れた兄が地面に着くと、同時に兄が率いていた骸骨兵の体は崩れていき、竜兵も動かなくなり。死んでいくように次々と倒れていった。

 私は軍の前に立つ。そして。


「敵将は討ち取った! 戦争は終わった!!」


 剣を上げながら勝利の宣言をすると兵たちは歓声をあげた。


「おおお! シェリア様!」

「将軍様!」

「蒼炎のシェリア様!」

「シェリア様! ばんざい!!」


 結局、なぜ兄は人が変わったのか、そして戦争を起こしたのかは最後まで分からないままだ。ただ、一時かもしれないが、平和が訪れた。今はそれを喜ぶべきだと。

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