◇赤にまつわる物語◇

つきの

◇紅色の着物

 わたしの始まりの『赤』の話をしよう。 


 まだあれは三歳くらいだったのだと思う。

 七五三の為の初めての着物選びと記憶しているから。


 そんな幼い頃の記憶なんて、もう数える程しか覚えていないのに、不思議にあの着物の赤い色だけは今でも鮮やかに思い出せる。


 紅色べにいろの名の通り、あでやかな、その色を胸元にあてられながら

「お嬢ちゃんは色白でらっしゃるから、こういう赤が本当にお似合いになるわ」

 と言われた時の誇らしいような恥ずかしいような気持ち。


 確か紅色べにいろの地色に可愛らしいまりと花柄、上に着る被布コートはトーンを落とした同系色を合わせたものだった。


 草履と巾着もお揃いで紅色べにいろ

 髪飾りも紅色べにいろで絞りの入ったものだったと思う。


 余程、似合うと褒められたのが嬉しかったのだろう。

 あれから赤という色は、わたしにとってお守りのような特別なものになった。


 千歳飴ちとせあめの袋には鶴と亀の縁起の良い絵。

 手に持つと、まだ小さい子供には引き摺りそうな縦長の袋だったけど、その大きさも嬉しくて、ずっと離さずに持っていた。


 あの時の七五三の写真は、実家の押し入れの奥深くに今も仕舞われているはずだけど、不思議と、あれからアルバムを開いて見たことはない。


 それはきっと、あの想い出の中の紅色べにいろの鮮やかさを失いたくないからだと思う。


 開いてみたその写真の、色褪せながらも懐かしい風情は、どんなにか愛おしいものではあろうけれど、それはもう少しだけ、歳を重ねた後のお楽しみにしておきたい気がしている。


 ◇


【紅色】

紅色(くれないいろ、べにいろ)は、キク科の紅花の汁で染めた鮮やかな赤色のこと。わずかに紫みの赤色。単に「くれない色」や「べに色」と言う場合もあるが、表す色に違いはない。

 ****** 『Wikipedia』より引用

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