第38話 なんじゃこりゃあ!

 視界の補整が軽くなってきた。

 空が白む中、中尉をおぶって後方の二人の元へ向かう。

「妖気を注ぎ込むって……おかしな意味かと勘違いしちゃいますよ?」

〔犯し? 乱暴はダメだけど大体あってる。初めてだしな〕

「ちょ、童貞とか言っといて、そうなんですか」

〔嬉しい?〕

「めっちゃ嬉しいです!」

〔意識のない女の子を弄びたいのか?〕

「なんてことを。てか意識あるじゃん……そうだ、〝治療〟ですよ」

〔いや事務的にされても〕

「ごもっとも」

 軽口を叩きながらも、背中の感触のせいで歩き辛い。

〔弄びたいのか?〕

「もう頭がおっ、いっぱいですよ」

一昨日おとといまでピュアだったのに、こんなに立派になって〕

「ピュアでしたっけ。てか立派ってどこが」


 ウリアに作って貰ったおんぶ紐のおかげで気楽になった。ネム大尉の連絡で展開していた本部防衛隊も解散したとのこと。大尉はもう報告も全て済ませたとか、ほにゃほにゃに似合わず仕事が早すぎ。ぜひ教災科に戻って頂きたい!

「気絶しても他所だと【存備ぞんび】で動かすんだけど、使えるの少佐だけだし」

〔いいんだよ。軍曹にとってはご褒美だし〕

「私やっと使えるようになりましたよ……立って歩けないですけど」

〔この距離を這い摺り回って帰るとか興奮してきたな〕

「渡さないっすよ、このままお持ち帰りです!」

「手を出すと噛まれそう」

「完全に発情してますね」


 建屋の外で大勢に迎えられ、ちょっとした凱旋気分だったのだが、妙にそわそわしている。

 これから出撃だという。ははん。回収どころではなかったが、馬肉ってことだな。よろしくお願いします。

〔軍曹、食事するにしても、取り敢えず私の部屋まで運んでくれ〕

「了解です。じゃ、ここで解散しますか」

「お疲れさまです」

 スロープに向かう。いろんな所にあるのだが、いつの間にか行きたい場所に着いている不思議な仕組み。

「ここって何階建てなんですか?」スロープをぐるりと上りながら問う。体感では三階?

〔いや、さっきも外から大きさ見ただろ。実際に歩いて移動するのは無理だ。まぁ仕組みはともかく基本的に竜頭りゅうずが誘導する。着いたぞ、この階層だ。正面に太い柱があるな。あれを三周しろ〕

 言われた通りにする。ぐるぐると――柱が徐々に薄くなって消え去り、大広間の中に居る!

〔私がこの階層のどこかに居るのは公開情報だが、私の部屋があるのは誰も知らない。今の手順でも、私と一緒じゃなきゃ辿り着けない〕

「おじゃまします、めっちゃ広い――けど、何もないですね。床はこれ全面ISBNですか。まさか……」

 目前の白い床が円形にせり上がり、その周りを覆うのは同様にせり上がる華麗な装飾が施された壁。実際に見たことはないんだけど、うん、なんかする施設にあるっぽいベッドだ。想像だけど。てか失礼な感想か。

 考えてみたら、オフ炉じゃないのは初めてだな。オフ炉は現実離れした空間に入っちゃえばもう裸だから夢のように浸ってしまえばよかった。急に緊張してきた。

 姫さまを慎重にベッドに降ろし、おんぶ紐を解いて横たえる。袴から覗く白い地下足袋が気になって、伺いも立てずに脱がす。ハードルの低そうな所から早く触れてしまいたかったのだ。

「袴というか、スカートですね」横が開いていないことに気付き、なんか適当に喋る。

〔戦国時代は金属の板だったんだ……そんな舐め回すように見るな~〕

 広いベッドが波打ち、彼女は中央に運ばれうつぶせになってしまった。俺の竜頭りゅうずと合意していろいろ操作しているようだ。

〔ご飯……食べに行っちゃう?〕

「行っちゃわないです……もっと、美味しいの、食べたいです……」


         ☆


〔今さらだけど、目的を確認するぞ。上手くいくかわからないけど、キミの不思議な妖気を私の蓄把部に注入して覚醒するか試す〕

「はい」具体的に言われると生々しい。

〔ところがだな……さっきは期待させてしまったかも知れないが……私と営むと、キミにとってよろしくないことになる。元の世界に戻れるかはともかく、普通の人生を送りたいだろ〕

「まあ、はい」普通じゃない人生って何だろ。「やめときます?」

〔そっちじゃないほうで致してみよう〕

「じゃないほうって……とんでもないこと言ってません?」

〔抵抗あるかな。生物としての正規の仕様では使用したことが一度もないんだけど〕

「代謝制御ですね……というか抵抗ないんですか。順序というか。自分も大概ですけど」

〔順序って、そんなシリアルなモンでもないだろ〕

 シリアルなモンて。もっとシリアスにさ。

〔まぁ考えても仕方ない。初めてなんだし。取り敢えず脱げ〕

「了解です!」

 俺は高々とジャンプし、空中で戦闘服を脱ぎ捨てダイブした。異世界にも我が国の伝統芸能を知らしめねば!

 するとベッドから数本の白い触手が伸びて掴まれ、うつぶせの眠り姫の前で正座。全裸。

〔落ち着け。そんな凄まじい状態じゃ真っ二つになってしまう。目覚めようとして永眠とか、これがほんとの珍事なんてな。あれ、私が死んだらキミ出られなくなるんじゃ……〕

「患者の容体に注意します」

〔それでだ。おっぱいの大きさを変えられるの知ってるよな〕

「さっきぐらいで気持ちいいですよ」

〔私じゃなくてな、キミのソレ、調整したい。真っ二つになってしまう〕

「そんなこと出来るなら、お好みでどうぞ」

〔ありがとう。ではキミの竜頭りゅうずと相談で〕


 細くなって。

 長くなって。

 びっしりコリコリイボイボになった。


「なんじゃこりゃあ!」

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