第2話 見合いの話があった!

僕は大手食品会社に勤めている。大学を卒業して上京してここへ就職した。名の通った会社だから福利厚生や労働環境がしっかりしている。派手さはないが良い会社を選んだと思っている。ブラック的なところは一つもない。サービス残業もないし、しない。


5月になって会社から帰ると郵便受けにレターパックが入っていた。父親からだった。レターパックはこのごろ会社でもよく使っている。まあ、簡易書留みたいで書類を送るときには好都合だ。仕事では、メールで添付資料として送る方法もあるが、僕はもっぱらこれを使っている。この方が先方の受けが良い。


中をあけると、父親の手紙と女性の写真と履歴書が入っていた。手紙には見合いをしたらどうかと思って相手の写真と履歴書を送ったと書いてあった。


写真はスナップ写真ではなくて、プロが撮った見合い写真だった。すごく綺麗な娘で奈菜に良く似ていると思った。髪はショートでボーイッシュなカットだ。顔立ちの良い子はこれが一番よく似合う。僕の好きな髪型だ。


履歴書を見ると、名前は新野にいの直美なおみ、年齢は28歳、東京の有名私立大学を卒業している。3年前まで一流商社に勤めている。その後は名の知られている派遣会社の社員になっていた。趣味は料理、読書、映画鑑賞と書いてある。まあ、ありきたりの趣味だ。


奈菜に似ている綺麗な娘だから会ってみる気になった。すぐに父親に電話する。


「父さん、レターパックの中を見た。お見合いの話だね」


「そうだ、お前ももう31歳だ。早く身を固めてほしいと思って。男も歳が行き過ぎると嫁の来手がなくなるぞ」


「せっかくだから、お見合してみようと思う」


「そうか、それはよかった」


「だれの紹介?」


「うちの会社の取引先のお嬢さんだ、確か3人姉妹の真ん中だと聞いている」


「取引先なら、話がまとまらないと父さんに迷惑がかからないか?」


「こればかりはご縁の話だから、大丈夫だ。先方から断られるかもしれないし、気にすることはない。それは先方にも確認しているから」


「分かった。ずっと、そっちにいる人なの?」


「大学を卒業してからずっと東京で勤めていたそうだが、年齢も年齢なのでご両親が心配して、こちらへ呼び戻して結婚を勧めているそうだ。それで帰ってきてお見合いを始めたと聞いている」


「分かった。僕はどうしたらいいの?」


「すぐに履歴書と写真を送ってほしい。写真はスナップ写真でいいから」


「分かった。明日には送るから」


すぐにパソコンから適当な写真を選んでプリントアウトした。履歴書は前に作ったものがあったので、最近の事項を加えて作成した。パソコンがあるとすぐに出来上がる。次の日、レターパックで実家へ送った。


3日後の夜遅く父親から電話が入った。先方からお見合いしたいという返事が入ったとのことだった。お見合いの日程の調整をしたいと言うので、今度の土曜日なら帰省できるので、午後2時以降なら可能と伝えてもらうことにした。


見合いの場所は、駅前のホテルのラウンジで午後2時からとなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る