たぶんコンテストに出す。静かな神社、翡翠、高校生。

 静かな神社がある。そこは本当に人が訪れない。

 そこには意思を持った巨大翡翠が見えないそして入れない結界を貼っているから。


 だがそこに、そんな場所に、とある高校生が現れる。


「ここが、翡翠の大神社……? なにもないけど……。あのー! 翡翠様! お願いがあります! 翡翠様!」


 神社は応えない。姿も表さず静かに佇んだままだ


「お願いします神社様! 僕のお願いを、話だけでも聞いてください!」


 見えない神社から声が聞こえる。


「話だけ聞いてやろう」


「その声は、神社様! えっと、僕の、大切な人が、不治の病にかかったんです。お願いします、病を治してください!」


「娘の名は」


「ヒカリです! 藤花ヒカリ!」


「……なるほど、この娘か。私なら治せるだろう。……我の願いを叶える代償は知っているな?」


「はい、祈祷者の命を差し出すと」


 ここで神社が姿を見せる。

 一般的な神社とは何もかも違っていた。これはすべてが翡翠でできている神社だった。

 柱や屋根に無数の苦悶した顔が生え、輝きを放っている。


「捧げるとはこういうことだ。願いを叶えるエネルギーは、それまでの代償になった人物が持つエネルギーなのだ」


 男はつばを飲み込む。


「覚悟は、あるのだな」


「……はい!!!!」


「では、後方をまず見ろ」


 問いかけられて男は振り返る。するとここに近づいている高校生の女の子が。


「ヒカリ!」


「ゆうちゃ!…ここは……翡翠さんだよ……だ……よ。じぶん……ささ……な……で……」


 必死でここまで来たのか、息も絶え絶えに話すヒカリ。


「こんなところまで来たからもう息が切れ切れなんだろ。ここで待っておけ、俺が捧げればヒカリは元気になるんだ! 俺より、ヒカリのほうが世界は必要と欲している!」


「ゆうちゃ、やだ……いな……ならな……で……」


「割り込んでよいか」


「あ、はい! 翡翠様!」


「我のエネルギーが我らを使わずに直してほしいと強く欲しておる。若いエネルギーはここに来るな、ともな。一つ案がある。このようなやり口になるがいかがか」


 ――春。新学期――


 そこにはゆうちゃんとヒカリの姿があった。


「俺とヒカリの二つの魂、それを一つに合わせ、増えた魂を担保に病をとる、か」


「ゆうちゃんどうしたの下向いて呟いて。今日から新学期だよ! わたし制服で高校に入るの初めて! みんな仲良くしてくれるかなあ?」


「あー、お前は、男子にはかなりの人気が出るよ、うん。女子は普通に生徒会長の安永さんにたよろう、運良く同じクラスだ」


「あ、優ちゃんの方が緊張してるね! 同じ魂が分割して二人に入っているから感情や感覚が共有されるんだよねー」


 ニコニコしながら解説するヒカリ。


「そうなんだが、お前が男とひっついたら……その……」


「そ・ん・な・こ・と・し・な・い! 私を助けてくれた恩人だし、感覚が共有されるんだよ? ゆうちゃんが他の人とキスしたらその感触が私にまで……うわぁ」


「いやまあそうなんだけどさ、思春期じゃん、俺ら」


「え、ゆうちゃんは他の女の子と……エッチとか、したいの?」


「違う違う! あの日お前と添い遂げるのは決意したんだ! だから……あ? ……あー、その顔はあれか、俺をはめたのか」


「違うよー流れでだよ。ふふふん。さあ校舎に入ろう、私たちの新しい世界へ!」

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