11/25初霜「つまりは単純に君のこと」

「あ、霜おりてる」

 車のフロントガラスに真っ白な模様が描かれていた。これを落とさなければならないことを考えると気が重いが、本格的な冬の訪れに心が躍る。

 私は冬が好きだ。鼻の奥が痛くなるほど冷たい朝の空気。やわらかな日差し。高く澄んだ空。雪も好きだ。お気に入りの赤いマフラーを巻いて、転んでしまわないように慎重に、だけど軽い足取りで歩いていく。

 中でも一番好きなのは霜柱を踏んで歩くことなのだが、最近はこのあたりでも土の地面が少なくなってきてそれができない。そういうとき、地元に帰りたいと少しだけ思ったりする。

「寒っ……」

 家の中から清花が震えながら出てくる。清花は寒がりで冬が嫌いだ。冬は冬眠している小動物みたいに動かなくなる。

「こんな寒いのに元気だよね……」

「冬好きだもん。霜も綺麗だし」

「私は無理。このままだと凍っちゃうよ」

 育ってきた環境が違うから云々、という曲を不意に思い出した。清香は冬が駄目で、私は夏が駄目。それは仕方ないことだけれど、一緒に暮らしてるんだから、ちょっとはお互い歩み寄りたい。

「じゃあ私が暖めてあげる」

 そしたら、少しは冬のことを好きになってくれるかな。

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