11/18毛糸「ストラングラー・チョーカー」

 買ったばかりのチョーカーをつけて本を読んでいると、シアが無言でチョーカーに触れた。

「ああ、普通のチョーカーなのね。紛らわしい」

 あらゆる人の首には、不可視の糸が巻きついている。シアはその糸を見ることができるが、たまに首に巻き付いた糸が本物なのか本来見えないものなのか区別がつかなくなるらしい。

「最近、毛糸のチョーカーが流行ってるんだよ」

「そんなに細くては暖かくないと思うけど」

「まあね」

 毛糸である必要があるのか、とシアは疑問に思っているらしい。おそらく最初にこのチョーカーをつけた人はそこまで気にしていなかったと思う。

「すごく流行っているから、間違って切らないようにね」

「私の鋏は毛糸は切れないわ」

 区別がつかないとなると、間違って、本来切るべき糸ではない毛糸を切ってしまうかと思ったが、そこは心配ないらしい。

「そうだ、シアもつけてみる?」

「私は別に」

「そう言わずに。きっと似合うと思うよ」

 何本か色違いで買ったチョーカーの中から、シアに似合いそうな青色のものを手に取った。シアの後ろに立って、シアの首にチョーカーを巻きつけると、わかりやすく彼女の体が強張った。

「怖い?」

 こんな弱い毛糸では殺せないのに。シアは無表情を取り繕ってから言った。

「自分を殺そうとしている人にこんなことされて、怖がらない人は少ないと思うけど」

「大丈夫だよ。今はそのときじゃないから」

 いつでもいいわけでも、誰でもいいわけでもない。けれど出来心というものはある。僕は、シアの首にかかる毛糸を軽く引っ張った。

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