第48話 27日目続き

 前より輝いている。

 にゃ〜お(俺だよ、俺)

 飛び回っていたのが弾かれたように、ぴたっと止まり、ホバリングする。

 きょろきょろし、俺がなおも鳴いていると、目に留まったようで俺の上まで飛んできた。

「助けてくれた人の知り合い?」

 俺は見守ってただけだ。

 それでもあなたがいたから彼女はできた。巡り巡ってあなたのおかげでもある。

 お……う?そういう考え方もあるか。

 俺と会話できるのか?なぜ今になって?

 付置された星の配置のおかげ。偶然は偶然じゃない場合も多い。あなたは恵まれた。

 それじゃそういうことにしておこう。キミは閉じ込められていたんだろう?解放されたんだ、自由の身だ、どこへなりとも行けばいい。

 助けられたままではいられない。望んで与えるのがわたしたちの教え。

 俺を戻せるか?

 自然の摂理に任せたほうがいい。

 ?まあいい、ならメルスだ。助けてくれた女の人がいたろ?あの人とはぐれてしまったんだ。どこにいるかわかるか?

 妖精は遠くを見ているようで近くを見ているようだった。

 ……魔窟へ行かなければいけない。

 洞窟か?ダンジョンなのか?

 知られてはいけない場所。普通では交換できないものとものが交換される、ありえないところ。そこで取引するのは、尋常ではないものたち。

 算段はあるのか?

 ある。

 なら、すぐにでも行こう!

 その前に、ぬくらせて欲しい。

 どういう……ぬぉ?!

 妖精がモフってきた。

 今の俺の毛並みは悪くはない。気持ちはわからなくもないが。

 ごろんごろんし、キャッキャパタパタする。

 ぬくぬく寛いでいた。

 ひとしきり満喫したようで、ちょこんと俺の頭の上に跨る。

 ごー!

 俺は騎獣か!

 ゴロゴロがうまいのだ。

 身体はすっかりてなずけられてしまった。

 縮地ばかりだと方向を見失いかねないので、四肢を使って荒野を疾駆する。

 危険生物や異常気象、物理的障害もなんのその、数里を目まぐるしく飛び越えた。

 この身体が持つ仙力と、妖精の魔法がすこぶる強力なのだ、難なくもない。

 途中、交換するものが必要だということで、多次元に接しているイッカクネズミのミイラをとりに行った。

 悟りの域に達した脳がオメガバーストを起したと聞いてもピンとこない。

 どことも接しているとかみ砕かれて、ああそうかと途方もないスケールにうっすらとよぎったぐらいだ。

 霞を食っているとはいうけれど、これがまた旨いのだ。

 水のようでいて甘露のごとく、とろみがありながらも脳を突き抜けて喉越し爽やか、全く癖がない。

 けれどもしっかりとした食べ応えがあるのだ。

 こんなものが食べられるのか、こうなると。

 その気になれば、七色の雲を呼び出してそれにさえ乗っていれば疾く早く移動できる。

 なんだか期待が持ててきた。

 雲海の上で昼寝をする。さすがに体力を消耗したからだ。

 仙眼で、妖精がうたた寝していると頭の上で光の粒が定期的な運動をしていた。放っておいて問題なかろう。

 それでもぼんやり眺めていると、数が増えて厚みができて小さな世界のように思えてくる。

 洞窟の一件もあるし、案外背負っているかもしれんね。

 世界。

 わかりえないと割り切っていた。

 知ると、次の知らないが剝けて出てくるのが本質。

 世界を管理しているシステムがあったとしても、それは鋳型で、かなり簡略化した模造品。

 なあ。

 アンタ、なんなんだろな。

 馬だよ……。

 ?!

 なんだ、寝言か。

 紐づいているんだよ……。

 どういうことだ?

 世界のいろいろなものと紐づけられるのがわたしたちの力……与えるのに必要な能力……。

 どうして必要なんだ?

 世界にできたでこぼこを正す……。

 アンタたちはいっぱいいるのか?

 昔はね……だんだん少なくなって、世界も風邪をひいた……。

 だんだん要領を得なくなってきた。覚醒状態じゃないんだから、これが限界か。

 いつも、ありがとさん。

 むにゃむにゃ……これが妖精さんだからね……。

 会話は終わり、自分の考えに没頭する。

 メルスは取り戻す……!

 何がなんでもだ。

 でも、でもだ。

 その後だ。

 俺たちはいつだって無軌道なんだ。

 メルスに聞いてみることも考えてはいた。

 答えはわかっているんだが……。

 このまま冒険が続くとは思えない。

 どこかで腰を落ち着けねばならない。

 それが、どこかで、なのだ。

 この旅はおそらく平穏無事には終わらないだろう。

 それは俺らが普通ではないから。

 1箇所には長く止まれないかもしれないな。

 そんなはぐれモノでも、ささやかさは欲しい。

 ぬくもりは求めたい。

 あえかな望みなのだが。

 そして、食べたい。

 ???

 どうしても、この仙猫の本能が混じってしまう。

 ともかくだ、一生は死ぬまでが終わりだとしても、何かしらの区切りは必要なのだ。

 物語の終わりのように。

 こうして考えているうちに、実はさっきから頭をもたげてくる思いがあって、気になって気になって仕方がない。

 終わり。

 死。

 俺の死は、いつやってくるんだ?

 27日はそのまま寝入ってしまうのだった、なのでこの日は終わり。

 


 


 

 

 

 

 

 

 

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