第27話 17日目続き

 メルスはおかしい、とすぐに悟った。

 何度も何度も声がけをする。

 テレパシーではない。

 絶叫に近い切実な。

 あいだあいだになにか言ってはいけないこと、これまでなら言わなかったことを口走ってしまったのかもしれない。

 それほどメルスは我を忘れていた。

 石は物言わない。

 ただの石のようだ。

 もう涙ヨダレでぐしゃぐしゃだがそんなこと関係ない。

 どうして。

 こんなこと、のぞんでいない。

 だって、そむはわたしの。

 ……?

 言葉が継げないことに愕然とする。

 なんだ。

 なんなのだ。

 つながりが。

 たたれてしまった。

 たぶん、えいえん。

 えいえん。

 ずっと。

 このまま。

 誰もいない、吹雪く雪原が見えた。

 そこで知られぬまま、雪の中へ埋まっていくのだ。

 取り囲む二人はオロオロしている。

 気でも違ってしまったか。

 漏れ聞こえた。

 !!!

 メルスは扉を押し開け、駆け出していた。

 わからない。

 でも、どうしようもない。

 抑えきれない、止められない。

 そむならたしなめてくれていたかもしれない。

 ぶんぶん頭を振る。

 わるいことはかんがえちゃだめ。

 はあはあはあはあ

 どれくらい走ったのだろう。

 まわりはすっかり森の中。

 ほーほーほー。

 メルスは自分を元気づけた。

 においがする。

 もとを辿るように向かうと、

 上品なおばあちゃんが住んでいそうな、ツタに覆われこじんまりとした小綺麗な家屋があった。

 ぼーとメルス。

 こんこんとノックするも返事はなく、しばらくし、入る。

 陽が差し込んだあたたかみのある無人の、今さっきまで気配があった妙な室内だった。

 暖炉の火は入り、掛けてある鍋がグツグツしている。

 お腹の空く匂いだ。

 単純そうで、奥深い。

 頭の中がもぞもぞする。

 思い切って、だれかいますかー、と声がけするも、やはり返事はなく。

 ちょこんと綺麗な古さの椅子に腰掛け、そのまま、待つ。

 チュンチュンチュン。

 さわさわさわさわ

 こそこそこそこそ

 ことことことこと

 ぐつぐつぐつぐつ

 眠たいような、何事か訪れを待つために保っているような、ゆらゆらとした気分の中、ちゃらん、と音がした。

 トントントントン。

 ノックするような、足音のような。

 しーん。

 メルスは我慢できず、目の前の木製テーブルをコンコンコンする。

 ややあって、

 コンコンコン。

 どこから鳴っているのだろう。

「誰かいるの?いるならコンコンして」

 コンコン。

 メルスはゴクリと唾を飲み込んだ。

 これからおはなし!だ。


 

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