第3話*秘書が反抗的になっちゃったよ

「にしても、中はまともなんですね」


 さっきの石像の騒ぎもあり、ソノは内装の心配をしていた。

 だが俺を舐めないでほしい!

 流石に真面目に作ったぜ。


「まあさっきのはふだけただけだよ」

「そういうのは程々に」

「わかってるって」

「本当ですか…」


 こいつ疑ってやがる!

 俺の働きっぷりを見せてやらないといけないみたいだな!


「ところで魔王様」

「ん?」

「魔王様のお部屋はどこですか?」


 お前そんなの最上階のいっちばん奥に決まってるだろ。

 聞かなくてもわかるだろー?


「…わかりますが、もう少し近くにしといてください」

「なんでだよ!奥の方がボス感あるだろ」

「そこに行くまでの我々の苦労も考えてください」

「はあ…わかったよ」


 最上階に来てしばらく歩いたため、目の前に部屋の扉が来るようにする。

 言われた通りにしてやったのにソノは目を丸くしてため息をつく。


「なんだよ」

「いえ。魔王様は規格外なんだなぁと思いまして」

「褒めてんの?貶してんの?」

「さあ」


 さあって。

 貶してるな絶対。


「まあ入れよ」

「言われなくてもそうさせていただきますが」


 お前、一応俺の秘書なんだろ?

 そんな態度で大丈夫か。


 最初と対応が違いすぎる!

 そんなに石像ダメだったか!?


「魔王様、こちらの資料をご覧ください」

「何…?"コントラと魔法について"…」

「まずはこの世界について知っていただきたく」


 一通り読んだことにした。

 読んでいる間、ソノは要所要所の説明をしてくれ、流石の説明力だと思った。


「大体わかった。俺の体力・魔力もスキルの数も凄い多いってのもわかった」

「え、そんなに多いんですか」

「ステータス見るか?」


ステータスを出してソノの方に向ける。


「……は?」


ソノはそう小さく零すと俺とステータスを交互に見る。

そして額に手を当て、ついには頬を引っ張り始めた。


…そんなに信じられんか?おぉん?


「い、いやいや。またなんか変な魔法使って偽装してるとか」

「んな訳あるか!というか種族と属性のとこ、伏字になってて見えんのだがなんでかわかる?」

「いえ……何かしらの力が働いているのでしょうか。もしかしたら存在しないものが…?」


ソノが本気で考察し始めてしまった。

これからどうしようかなぁ。

とりあえずソノが落ち着くまで魔法で遊ぶか。


「んー………魔物見たい」


窓の外を見ればたくさんの魔物。

さっき作り出したテレポートで下に降りる。


「はろーご機嫌いかがー?」

「まっ、魔王様!?」

「おー!魔物って結構種類いんだなー!」


周りの魔物が頭を下げる中をズカズカ歩く。


…もっと緩くていいんだよなぁ。

正直堅苦しくて話になんない。


「面を上げよー」

「いえ…!そういう訳には…!」

「魔物の顔見てみたいんだってば」


命令と言えば顔を上げるのだろうがそんなことはしたくない。

俺の社畜生活を思い出させるからなぁ。


「まあいいや」

「魔王様!」

「ソノか。どした?」

「どした?じゃないですよ!!」


いつの間にか下りてきていたソノは怒ったように手を腰に当てる。


…うん、何となく世話焼きの幼馴染のことを思い出したよ。

懐かしいなぁ……もう会えないんだよな。


「……どうかしました?」

「いや、何でもない。元の世界での知り合いを思い出しただけだ」

「そう、ですか」


そんなに申し訳なさそうな顔しなくてもいいのに。

どっちにしろ死んでんだから会えねえよ。


そうフォローを入れられなかったのは、彼女が書類を突き付けてきたからだろうな。


「魔王様、こちらの書類ご覧になってくださいましたか!?」

「な、なんだよ急に」


ソノは何を見つけたのかとても興奮している。

書類の一部を指さし、俺に見せる。


そこには"ステータスの伏字の原因について"と書かれていた。


おい、さっきはこんなのなかったぞ。


「それどこにあったんだ?」

「魔王様の机の引き出しです。恐れながら勝手に見させて頂きました」

「ああっ!?俺もまだ見てねえのに!」

「そんな子供みたいなこと言ってないで!」


ステータスの伏字。

俺のステータスは種族と属性が伏字になっている。


そしてソノは意図的に体重だけを伏字にしている。


「こちらの資料、かなり細かく調べられているんです!なので時間がある時にでも目を通しておいてください!」


▽マサシ ハ ショルイ ヲ テニイレタ!


「わかった。じゃあ俺魔物見てて忙しいから」


ソノに背を向け魔物たちに歩み寄るとソノにゲンコツを受け、魔物たちには後退りをされてしまった。


…俺の何がそんなに気に食わないって言うんだ!!!


流石の俺でも傷つくぜ?


「……な、なんだよぉやめろよそういうの」

「ろくに信頼も築いてない状態で寄るのやめてあげてください。そんなことより魔王様は今後についてのお話がありますので…」


今後についてのお話だと…!?

そんな面倒くさそうなのヤダよ!!


「い、嫌だね!」

「我儘とか結構なんで戻りましょうか」

「ああああああああああぁぁぁ」


魔物たちから哀れみの目を向けられ、虚しい気持ちになったので大人しくついて行くことにした。

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