第27話 約束の日2

 ドレスを家から持ち出し再びティールームに戻ると既にジュリーは起きていていつもの様に新聞を読んでいた。



「お、逃げ出さずに来たな」



「に、逃げるだなんてそんな」



 やばい、ちょっとだけ逃げ出したいと思ってたのバレたか……



「そうならないように昼飯によんだわけよ」



 うっ……そうすか。



「夜もあるからな、軽いの作ってやるよ」



「何作ってくれるの?」



 ジュリーが見せてきたのは卵だ。



「オムレツ作ってやる」



「オムレツ!嬉しい!」



「まずはトマトと玉ねぎをみじん切りにしてと」



 トントントンと見事な包丁さばきであっという間にみじん切りが終わる。

 ジュリーって料理上手だよなあ。



「それから卵を割って……1人2つな」



 片手でコンコンと割っていく。

 お見事でございます。



「そんでミルク入れて、チーズをたっぷり」



 あー、これ絶対美味しいやつだー。



「塩コショウで味を整えて、バターと共に焼く!」



 ふわっと香ばしい香りが……よ、よだれが。

 菜箸をクルクル回したかと思うとフライパンだけで卵を閉じてゆく。

 神技だ、神の領域だ。

 あっという間にお皿に盛り付けられ……



「おまちどー」



「全然待ってないよ。ジュリーすごい!料理上手だー!」



「ふははは。もっと褒め称えたまえ。あ、これも。ジュリー特製デミグラスソースー」



「おおおおお!」



 オムレツにたっぷりかけてくれる。

 艶々と輝いております!



「いっただきまーす!」



 スプーンで卵を割るとトロっと半熟卵の中身が出てくる。

 ソースと共に口に運べば……



「んー!おいひい!ひあわせー!!」



 もぐもぐもぐもぐもぐもぐ……



 じーっと私を見てくるジュリー。



「ん?」



 もぐもぐもぐもぐもぐもぐ……



「お前……エディの前ではもう少しお上品に食えよ」



 んぶっ!!

 危ない、吹き出すところだった。



「口いっぱいに頬張って食うレディなんてこっちの世界にいないからな……」



 な、なんですって!?

 呆れた様子のジュリー。



「いいいいいまから練習します!」



 お上品に少しづつ……

 ううう、泣きたくなってきたよおおおお



「まあ……そうやって美味そうに頬張って食ってくれる方が作り手の俺としては嬉しいんだけどな」



 そう言いながらジュリーもオムレツを食べる。

 もちろんバクっと豪快にだ。



「オムレツうんめー」



 そうして食べ終えた頃にエドワード様とロードリック様がやってきた。

 何日ぶりだろう。

 なんだかとても長い間会っていなかった気がする。

 2人の変わらないその姿を見るとすごくほっとした。



「エドワード様、ロードリック様、おかえりなさい」



 2人が微笑む。



「「ただいま」」



 2人に暖かいお茶を用意しよう。




 ■□▪▫■□▫▪



「そういう事だったのか」



「それにしてもお前精霊王って……」



 2人ともびっくりです。

 はい、洗いざらい話ました。

 水の精霊王、火の精霊王の事。

 精霊王のおかげで治癒の力がついたこと、エッグノッグでジュリーの風邪とキャタモール様の子供の病気が治った事、そして昨晩の紅茶の事。



「まあ、この事はとりあえず内密にしといてくれや。もし夢子が精霊王に会って、治癒魔法が使えるようになったって事が知れ渡ったら……正直夢子がどうなるかわからないからな」



 ジュリーも私も心配しているのがそれだ。

 ほんとにどうなるんだろ……



「ああ、黙っておくよ」



「まあ、内密にはしておくけど……隊士達はこの店皆来るって言ってたぞ。あの紅茶をもう一度、ってなー。俺も飲ませてもらったけど、すげー回復効果だったな」



ロードリック様も飲まれたのですね。



「まあそのうちほとぼりは冷めるだろうさ、それまで誤魔化せ。夢子、ほれお前の好きなアールグレイだ」



 お茶をいれてくれるジュリー。

 うう、誤魔化せるだろうか。



「美味し……」



 うん、やっぱり紅茶はアールグレイが1番好きだな。

 はー幸せ。



 じーっと私を見てくるエドワード様。

 なんだろ?



「どうかしましたか?」



「いや、久しぶりに夢子の幸せそうな顔を見たなと」



「えっ?」



「お前は顔に出やすいからなあ……」



 そ、そんなに出やすい?

 は、恥ずかしい……



 ふふと微笑むエドワード様。

 そ、そんなに見ないで下さいまし。



「さてと」



 立ち上がるロードリック様。



「ほらエディ、そろそろ行くぞ。またな夢子、ジュリー」



「そうだな」



 席を立つエドワード様。



「それじゃあ夢子、また夜に」



「あ、はい……」



 う、どうしよ、顔が熱い……そして緊張します。

 2人が帰った後、しばらくしてボールトン家の人達がいらっしゃった。

 それも大人数、えらい大荷物と共に。

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