足元の向こうには

卯月レン

視線

田中知子は、今年2年生になった女子高生だ。

両親に「行ってきまーす」と言うと元気よく玄関を出た。

今日は朝からマラソン大会の練習があるために早く家を出る。

歩いていると後ろからポンっと叩かれた。

振り向くと親友の安西カナだ。

「おはよ、知子」

「おはよう、カナ」

ちょっと寒いせいか、頬が赤くなっている。

「朝からマラソンはキツいよねー」

うなだれてカナは言う。

「本当だよねー」

知子は走るのは好きだが、体育の授業だと憂鬱になる。

それは担任の奥村先生が苦手である。

入学した頃から、授業を受けていると視線がよく合うからだ。

視線が合うというか睨みつけられている、そんな気がする。

気のせいだろうか・・・。


カナに相談したこともあったが、

「私もよく睨まれてるよ」と言っていた。

誰に対してもそうなのだろうと思うことにしよう。

知子はなるべく目立たないようにしようと考える。

そうすれば、あの視線から逃げられるような気がするからだ。








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