思春期

 少年は成長し、中学生となった。



 街の開発は一通り終えて見映えは綺麗になった。街を覆っていた騒音も消え去り、車のクラクションが何の遮りも無く響びかせる様になった。


 街の風景が変わったが、彼を魅了するものは変わらず解体された家屋であり、倒壊するビルであった。


 彼は独学で爆発物について調べ、その知識量は下手の大人をゆうに越えていた。


 将来は自分もその現場に立ち会いたい、自分の手で建物を壊したい。その欲求は成長するにつれ増していった。



 ――だが、なぜそこまで惹かれるかは未だに分からない。


 同級生たちは徐々に色めき出し、女がどうだ、男どうだと話しているが、彼はそれについて全く興味を持たなかった。


 女性の裸体を見てどうするんだ、何がそんなに面白いんだ。それならビル解体の映像を見る方が彼にとって興奮するものだ。


それは彼が受験を控える年になっても変わらず、同年代と自分とのズレは大きくなっていった。


その時の彼は、自分が人間なのかと思い悩んでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る