『拝啓、百合作品を好む皆さまへ。大好きな友だちが神になりました。』

にのまえ あきら

〈Opening〉


 ――――――――――――――――――――


 Title:『Dear Everyone, To those who like Yuri works. Best friend became god.』


 The backup data is being read now...


 Please wait for a while...


 Data download is now complete.


 Please enjoy as many times as you like.


 May you find the reason for the lily...


 ――――――――――――――――――――


 六万回以上の試行を思い出すあなたの手の中には、黒い機体がある。

 両手のひらに収まるほどの大きさで、至ってシンプルなデザイン。非常に軽く、けれどしっかりとした存在感を感じられるそれは、よく見知ったゲーム機だ。 六万回以上の試行を思い出すあなたの手の中には、黒い機体がある。

 両手のひらに収まるほどの大きさで、至ってシンプルなデザイン。非常に軽く、けれどしっかりとした存在感を感じられるそれは、よく見知ったゲーム機だ。

 静謐で満たされた真っ白い部屋の中、あなたはツノのたったメレンゲのように柔らかく白いソファに寝そべり、そのゲーム機を手にしていた。

 一人では広すぎる部屋で、おもむろにゲーム機の電源をつける。

 そうして映るのは、エメラルドグリーンの背景が特徴的なノベルゲームのタイトル画面だ。

 ゲーム画面を見て、すぐに気づく。このゲームには選べる項目が『続きから』しかなく、『初めから』が存在していない。

 そんな不思議なタイトル画面のこのゲームについて、あなたはある噂を知っている。

 このゲームは『決して結末を見ることができない』、と言われているのだ。

 真偽はどうあれ、あなたは迷うことなく『続きから』を押す。

 画面が暗転する。

 数秒すると、白抜きの文字が闇の中で浮かび上がるように表示され始める。

 タイトルは日本語であったはずなのに、表示されるのは英語だ。

 けれどもそんなことには構わず、あなたは食い入るように画面を見つめる。


 さあ、ゲームを始めよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る