第8話 最強になる条件 その3 ある意味、賢者。

すごいです。


こんなことまで知っているなんて!


召喚された人って、賢者みたいですね。



…そんな風に言われて天狗になっていた時もありました。


新しい技術は、すぐに模倣され改良され、知らない人にも分かりやすいマニュアルで大衆化するということを忘れていました。


知識の安売りをしたつもりは、ありません。


知っていた知識で、みんなの仕事が楽になれば…と考えていただけで。


しかし、それは仕事を無くす人が出るという、思いもかけなかったことを引き起こしました。


無職になった人から、襲われることが多くなった私は、郊外に小さな家を建て、周囲を金に任せて魔法防御を完璧にさせ、衣食住も魔法で出せるようにして、閉じこもりました。


その中で、知っている技術と魔法の組み合わせとを考えていたもの。


いつしか、時間を忘れていました。


しかし、ある時、食事が出来なくなった。


つまり、魔力が供給されなくなったという事態に。


ほとんど地面に埋もれてしまっていた自宅から這い出て、周囲を見るが、鬱蒼とした森が広がるだけ。


郊外と言っても、街は見えていたのに、今はそれもない。


サーチ魔法を使おうとするが、魔力不足なのか起動しない。


慌てて、家の中にある魔力測定器を人力で動かす。


“魔力0”


魔力がないと何も出来ない。


呆然とするしかなかった。


*

あの森には、悪い魔法使いが住んでいるんだよ。


そう教えられた世代が、自らの街が害を受けることを望まず、かつ、この遠方の街まで物資を運ぶのを渋るようになったので、集団移転することにした。


移転は、数年かかったが、廃墟となった街と悪い魔法使いの住む森は、忘れ去られていった。


今は、悪魔が街を廃墟にしたと怖れられている。


怖れている国が滅べば、魔王に国を破壊されたと言われるのだろう。


賢者と言われた者は、いつしか魔王という名の賢者になったのだ。

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