第18話

 レオはヴラドにもう一度会わなければいけなくなってしまった。

 自分の方に落ち度があるから、本当は会いたくないのだ。

 だがそれは許されない。

 闇の眷属すべてに係わる事だから、詫びて相談しないわけにはいかなかった。


「謝らなければならないことがある」


「ほう。

 レオが素直に余に詫びると言うのか?

 これは余程のことなのだな。

 腹を据えて聞かせてもらおうか」


「実は、月乙女の事なのだが。

 恋する相手がいるのだ」


「なるほど。

 そう言う事か。

 だがそれは絶対に許されない事だぞ。

 余りに不覚ではないか」


「すまん。

 本当にすまん。

 だが恋は思案の外と言うではないか。

 家のカイが兄弟の心算で育っていても、月乙女が恋してしまったら、我らにはどうしようもないのだ」


「レオの言う事も分かるが、もう少し気を付けていれば、子供の内に引き離す事も出来たのではないか?」


「ヴラドはそう言うが、俺も大変だったのだ。

 先代は若くに亡くなってしまうし、伯爵は腑抜けになってしまう。

 当代様に幸せに育って頂かねば、最低限の花も確保出来なかったのだ。

 乳母と乳兄妹を引き離したりしたら、お前の所の送る花も確保出来なかったのだ」


「レオがそこまで言うのなら、どうにも出来ない状態だったのだろう。

 だがな、我ら闇の眷属と月乙女の間に子は産まれんのだ。

 どれほど恋焦がれようと、子が産まれなければ血が絶えてしまうのだ。

 その事を忘れるなよ」


「忘れてなどおらん。

 おらんから月乙女には反対しておる。

 だがな、余りに突き放して、不孝にするわけにはいかんのだ。

 月乙女が余りに嘆き悲しんでしまったら、花が咲かないのだぞ」


「そうだな。

 本当に厄介だな。

 月の加護を得るのに、何と呪われた条件が付いているんだ。

 だが、だったらどうする。

 ずっと側にいたレオはどう考えているのだ」


「ヴラドの魅了でスミス伯爵を操り、子作りさせられればいいのだが、月乙女の血統には通用しないのだな」


「ああ。

 残念だが、スミス伯爵に魅了は通じない。

 もちろん月乙女にも通じない。

 諦めてくれ」


「ヴラドの家の人間の家臣に、その道に通じた女はいないのか?」


「後宮の事を言っているのか?」


「後宮でもどこでもいい。

 いや、家臣ですらなくていい。

 娼婦でも乞食でも構わない。

 スミス伯爵の子を産んでくれる女はいないか?

 それと薬だ。

 スミス伯爵をその気にさせる、いい薬はないか?」


「そうだな。

 そっちの方も大切だな。

 月乙女の血統を増やすには、そっちの方が重要だな。

 分かった。

 出来る限り女を集めよう。

 だがお前の方も女を集めろよ。

 せっかく大金を掴ませてやったんだ。

 上手く使え」


「分かっているよ」

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