第24話

「レアラ様。

 どうなされるのですか?」


「これ以上王都の民を苦しめるわけにはいかないだろうね。

 逆賊の汚名を後世に残すことになっても、王家王国を滅ぼさなければいけない」


「情けない者達ですね。

 レアラ様の御情けが理解できないなんて」


「そう言うな。

 人とは業の深いモノだ。

 幼き頃より厳しく諫めて育てなければ、容易く欲に囚われてしまう」


「ですが、レアラ様があれほど悪人役を買って出られたのです。

 王家王国の為を想えば、欲を捨てて兄弟手を取り合って、レアラ様に対抗すべきでしょう。

 それを、外敵が城の直ぐ側まで迫っていると言うのに、兄弟で王位を争い、事もあろうの王都内での略奪を認めるとは、度し難い者達です」


「その通りだね。

 だけど、その御陰で踏ん切りがついたよ」


 レアラ様は、最後の覚悟を決められました。

 もし、王子達が民を想い国を憂い、手を携えて戦いを挑んできたら、和議を結ぶ御心算だったのです。

 王都とその周辺だけとは言え、王国の存族を認められる御心算だったのです。


 だが、その想いは通じませんでした。

 事ここに至っては、御手伝いさせていただくだけです。

 新たに主従の契りを結び直した元寄り子貴族も、一家も欠けることなく、王家王国の討伐に参加してくれました。


 レアラ様は急ぎ兵站を確認されました。

 常に確認されているのですが、念には念を入れられたのです。

 王都から入って来る情報が酷く、自給自足だけでは不足だと考えられたのです。

 最悪の場合は、行軍兵糧から王都の民に施しをしなければならないとまで、覚悟されたのです。


 兵を挙げて以来、ジェダ辺境伯領から補給を行い、行軍先での兵糧徴発を一切行われませんでした。

 従軍した貴族士族も、戦士の誇りを護り、民に対する乱暴狼藉を行いませんでした。

 雑兵を加えた大軍では、とても不可能だったでしょう。

 

 今回の蜂起を少数精鋭で行ったのは、民に迷惑をかけたくない一心でした。

 生き様に誇りを持つ騎士以外を従軍させたら、レアラ様や私の目の届かないところで、どのような悪事を働くか分からないからです。

 だから、私が集めた軍馬を活用し、兵站を少量で済むようにしたのです。


 行軍する各地で、従軍を希望する民は多かったです。

 ですが人間には、出来心というモノがあるのです。

 旅の恥は搔き捨てと言う言葉もあります。

 戦で興奮して理性を失う事もあります。

 普段なら罪を犯さない者を、私達の戦いに巻き込んで、犯罪者にする訳にはいかないのです。


 レアラ様は、一騎当千の貴族と騎士だけを率いられ、王都に攻め上られました。

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