第14話

「貴方達は、卑怯な王国軍にあって、唯一騎士の誓いを護った戦士です。

 それを評価して、身代金なしで釈放してあげます」

「「「「「有難き幸せ」」」」」

「馬は返してあげられませんが、武器と防具、それに食糧を与えます」

「「「「「感謝いたします」」」」」


 騎士の誓いを護った者達五人を、早々に解放しました。

 私が評価して、それを証明する賞状を与えました。

 これで王太子や側近貴族と違って、堂々と王都に帰還できるでしょう。

 私達も男がいなくなって清々します。


 彼ら五人が、本当に誇り高く清廉な騎士かどうかは分かりません。

 目端が利いて、逃げなければ私達が評価して、解放すると判断したとも考えられます。

 聖魔法で判定すれば、その人の心根は分かるのですが、ほとんどの人間は、大なり小なり邪悪な面を心に持っています。


 王太子と側近貴族のような、心が真っ黒な人間も珍しいですが、人の心に潜む邪は仕方がないモノかもしれません。

 ですが、私には耐えがたいモノなのです。

 男達が私に向ける邪悪な視線は、虫唾が走るほど嫌なのです。


 だから、表向き騎士の誓いを護った者達でも、男を側に置くのは嫌なのです。

 側にいても嫌にならないのは、肉親とレアラ様だけです。

 レアラ様が側にいて下さると、穏やかな陽の下にいるような、ぽかぽかと身体の奥底から温められるような気分になれるのです。


 一分一秒でも早く、レアラ様に御会いしたい。

 御養母様達がジェダ辺境伯領に辿り着かれた頃だと思われます。

 もう今なら、真直ぐにジェダ辺境伯領に向かっても大丈夫でしょう。

 大損害を与えた王国軍も、立て直しに時間がかかるはずです。


 私達が奪った武具や兵糧を再度整えるのは、並大抵の労力ではありません。

 再度整えられたとしても、地の底まで落ちた、将兵の士気を高める事など不可能でしょう。

 王太子と側近貴族の威厳と権力も、著しく低下した事でしょう。

 愚かな王も、肉親の情を抑え、長幼の序を改めて、王太子を廃嫡にするかもしれません。


 第二王子以下の王族が、側近と語らってクーデターを起こす可能性も高まっているでしょう。

 クーデターが成功するかどうかは、私には分かりませんが、王都の兵力を移動させ難い状況になっている事は確かです。

 まあ、私達を捕まえて、手柄にしようとする新たな王族が現れる可能性もありますが。

 

「姫様。

 待ち伏せでございます」

「分かっています。

 なかなかの気配ですね」

「はい」


 私達がジェダ辺境伯領に逃げ込むには、この街道を使うしかないと言う事は、少々知恵の回る人間なら直ぐに分かる事です。

 ですから、待ち伏せされることは当然です。

 まあ、その程度の知恵も回らない貴族が多いのが、情けない話なのですが。

 問題は、待ち伏せしていた者達の気配が、想像していた以上に強大だという事です。

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