俺達は海へ! その2


 夢を見ていた。


 どこか懐かしくて、悲しい昔の夢を……。




 ***


 夏樹の家から車を走らせて2時間。


「後少しで着くよー。」


 その声に目が覚める。どうやら俺は寝ていたようだ。


「ん………えっ。」


 目を開けると視界は少し斜めで、横を見ると夏樹がいた。


「あっ!もしかして肩に頭乗せてた?もしそうだったらごめん!」

「ううん。いいよ。気にしてないから。」


 夏樹は少し微笑み、許してくれた。よかった……。


 頭を上げ、窓の奥を見る。


「おおぉーー!!」


 そこにはどこまでも続きそうな綺麗な海が広がっていた。


「寝てたからって今更だぜ?10分くらい前から同じ景色だぞ?」

「だって海って俺、初めてなんだから仕方ないだろ!?」

「まじか!?慎二、お前初めて海に来たのか……」


 そう。俺は海に行った事がない。本当の俺あいつはどうなのか知らないけど今の俺は行ってない。


 中学の時、何度か家族は行っていたが、俺は部活で忙しくて行けなかったのだ。


 だから今回が初の海!高校2年生だがすげー楽しみだ!


「…………」

「どうしたんだ?夏樹?」

「いや、なんでもない。」

「そっか ……それにしても楽しみだなぁー!」




 その後、ようやくビーチに着き、俺達は自分達の場所を確保し、水着に着替える。


 俺達男性陣はすでに着替え終わりブルーシートの上で待機していた。


「おい慎二。女子達の水着がようやく見れるぜ?」

「あぁ。そうだな。」


 いつもは愛染の変態ぶりにちょっと引くが、今回は別だ。俺も一緒にのってやる。


 更衣室から女子達が現れる。


「「お、おぉーー。」」




 みんな胸の大きさがばらばらでまたいい!みんな違ってみんな良い!最高だね!


「おっぱいスカウター発動!!」


 愛染は突然叫びだし、夏樹達をじろじろと見始める。


「桃瀬ちゃんはB、愛華ちゃんはD、雪野先輩はF、美優さんは……」

「さんは………?」

「H!!?まじかよ!Hカップなだけにエッチな体してるぞ!!」

「おおぉ!!」

「………お前らな……」


 興奮している俺達に呆れたのか足塚先輩はため息をつく。こればかりは仕方ないでしょ!!


「お待たせー。」


 声をかけてきたのは桃白だ。

 自信が無いのか下は水着。上はTシャツと言った感じだ。Tシャツが水着を覆い被さり、まるで下を穿いて無いんじゃないかと思えるエロスを感じる。てか、愛染のやつ。Tシャツの上からでもわかるのかよ。


「………しゃあ!泳ぐぜ!!」

「あっ、ちょっと待って。」


 女の子達を間近で見れず、泳ぎに行こうとしたが、美優さんに止められる。


 隠しきれない程の存在感がある胸に視線がいきそうになるが耐える。

 水着はひらひらがついているタイプで、胸とそのひらひらのコンボはちょっと健全な男の子にはキツイかな……。


「な、なんですか?」

「なんでそんな声が裏返ってんの……えーとね。やっぱいいや。泳いで来ていいよ。」

「じゃ、じゃあ。行かせてもらいます。」


 海へ向かって走って行く。


「子供だなぁ。」

「いいんじゃない?初めてって言ってたし。」


 何やら言ってるが知らん。海水を堪能するのだ!


 走ってる最中にゴーグルをつけ、海へ飛び込む。


 すると青い世界が広がっていた。


 とは言ってもみんながくるビーチだ。魚などはいない。あるのは石や苔ぐらいだった。


 それでも。それでも言葉に出来ないほどの感動があった。


「ぷはっ!」


 息継ぎをした後辺りを見渡す。


「あれ?」


 なんでみんな泳いでないの?


 愛染達は何故か俺のことを微笑しそうに見てる。


 ……なんか恥ずかしくなって来た。


 海から上がり、俺はみんなの所へ戻った。

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