俺の協力者。

放課後、生徒会室に集まり、体育祭の会議をしていた。

「体育祭の準備係は俺に任せてもらってもいいですか?」

俺は勝つために、必要な準備をするために俺は準備係に入らなくてはならない。

ちなみ生徒会の体育祭の仕事は主に、


 準備係 二人

 放送係 二人

 得点係 一人

 選手宣誓 一人


って事になっている。まぁ、選手宣誓は生徒会長がやるって決まっているが。


「………いいだろう。もう一人、やりたい人は?」

そしてもう一つ、必要なのは。

「……雪野先輩。一緒にやりませんか?」

協力者だ。雪野先輩も俺と一緒の赤団。そして雪野先輩に全てを話し、おそらくだが、面白半分で手伝ってくれるだろう。

『最後の体育祭だし、なんか思い出欲しいよね!』とかも言いそうだし。


「えぇ!まさかの指名!?照れるなー。」

「そう言うんじゃないんですけど……」

雪野先輩はえぇ!?と驚いた表情をつくり、

「そうなの!?  まぁ別にやってもいいんだけど。」

「………よし、なら準備係は山本と雪野でいいな?」

俺と雪野先輩は頷く。


「ならうちと、愛華は放送でお願いします。いいよね?愛華?」

「私もそうしようと思ってたから全然大丈夫だよ。」

「えぇ!!?じゃぁ、俺一人で得点係!?」

愛染は桃瀬と夏樹にさりげなく拒絶されていた。頑張れ。愛染。


「………よし、なら決まりだな。少し早いが今日は解散にしようか。」

みんな、席から立ち上がり、生徒会室を去っていく。俺はその中の一人の雪野先輩を呼び止めた。

「雪野先輩」

「どうしたの?もっちん?」

そのあだ名定着してやるんですねそうですか。


「ちょっとお話を––––」

そう言って俺は雪野先輩に全てを話した。

勝負の事、俺が記憶喪失の事、そして俺と夏樹が昔、会っていて更に相思相愛だったらしい事を。


「–––––って訳なんです。雪野先輩なら手伝ってくれるかなって。」

全て話した後雪野先輩の顔を見る。

話している途中、俺はずっと下を向きながら喋っていた訳で、雪野先輩の表情がわからなかった。

見ると、雪野先輩は涙をボロボロと流していた。

あれ?なんか、思ってたのと違う。

「もっぢんにそんな事があっだなんで……!!」

「先輩、ちょっと落ち着いて!」


雪野先輩なら面白がると思っていたが、意外にも人情があるらしい。



雪野先輩を落ち着かせた後、本題に戻す。

「––––って言うやり方じゃないと確実に勝てないですよ。」

このやり方は間違っていると俺が一番理解している。でも、俺が勝たないと全てが終わってしまう。

「このやり方が外道なのはわかってるんですけど、その–––許してくれますか?」

雪野先輩は少し微笑みながら、

「もっちんって優しいよね。」

「え?いやそんな事無いで––––。」

「でも自分が泥をかぶってでも守ろうするのはただの自己犠牲なんじゃないかな?」

「う………」

雪野先輩のいつもとは違うまさに先輩の雰囲気と言っている事の正しさに言葉がつまってしまう。

「それに、これが学校にバレるとみんなに迷惑がかかってしまう。そして一番困るのが君の親だよ?」

「………それでも!これしか勝つ方法が……!」

俺がそう言うと雪野先輩がにっと笑い、

「そんな事をしなくても勝てる方法があるじゃん。生徒会の権限を行使して。」

「へ?」

「簡単じゃん得点をバレない程度に青より、上げればいいじゃん。」

「あっ。」


確かにと思ったが、すぐにその欠点に気づく。

「それでも、青が圧倒的に勝ってたら?」

「それはないんじゃない?だって、青団ってだいたい頭脳系が多いでしょ?でも赤団は」

「運動系………」

雪野先輩の言う通り、青団は足塚先輩率いる頭脳派タイプ。そして赤団は手塚先輩率いる運動派タイプ。

「青団が頭脳を使ったプレイをしたとしても、運動系には勝てないと思うけど。」

「まぁ、そうですけど。」


雪野は空気を変えるように手をぱんと叩く。

「そういうことで、赤団を信じてやるしかないよ!それでもし、負けてたら細工すればいいって事で!」

「………そうですね」

「だいたいもっちん、さすがに破壊工作はないでしょ!いくら勝つ為とはいえそこまでしなくてもいいでしょ!」

「……俺を助けてくれた香織を悲しませたくはないんです。」

雪野先輩は苦笑いをした後、再び笑顔を取り戻し、

「それにしてももっちんとあいっちって相思相愛だったんだね!!」

俺もこの話しを聞いた時は驚いたな。夏樹とぶつかった時結構無関心だったよな。それに一年生の時ももっと感動的な再会もありそうなのに。

「俺もこれには驚きましたよ。まぁ、全部驚きましたが。」

「あははは!それはそうだね!」

雪野先輩は爆笑しながら俺の背中をバシバシ叩く。痛い。


「とにかく、みんなを信じなよ。それじゃあ私帰るね!」

「はい。あっ、後この事は他言無用で。」

「わかってるよ!」

そう言い、雪野先輩は生徒会室から出て行く。


やっぱ、破壊工作なんて馬鹿な考えだったな。

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