第27話 盗賊団討伐作戦~ショウ③~

「はぁ、はぁ、なんで騎士団の奴等が。それにあのローブの奴はヤバい!早くゲルドさんに…。」


 一人の盗賊が森の中を必死に走っている。その盗賊は森を抜け、崖に空いた洞窟にたどり着いた。

 洞窟の入口には二人の見張りが立っている。


「はぁ、はぁ、助けてくれ…!!」


「ん?おい、どうした?」


 盗賊は見張りを見つけ、すがる様に走り寄った。

 だが次の瞬間、走っている盗賊の首が地面に転がり、胴体は盛大な血飛沫を上げて倒れた。


「案内ご苦労さん。」


「なっ?!」


 そこに、白いローブを羽織った物が舞い降りた。見張りの二人は何が起きたか理解できず、呆気にとられている。その間に二人の首も地面に転がった。


 ーーーー


 ―…ここがアジトか。他の人達置いて来ちゃったな。迷ってないだろうか。


 俺達は足跡を追うと、森の中で四人組の盗賊を見つけた。すぐさま三人の首をはねて、あえて一人を生かした。そうすれば仲間の元へ逃げると思ったからだ。

 案の定、その盗賊は逃げ出し、俺はその後を追ってきた。


「まぁいいか。それじゃ、狩りの時間と行こうか。」


 俺は転がった死体を気にも止めず、そのまま洞窟へ入った。


 洞窟の中は以外と広く、所々に扉があり、居住できるようになっていた。

 俺は扉を開けて行き、見つけた盗賊を何も言わず斬って行った。ここの盗賊は皆殺す。あの村を見てそう決めていたからだ。


 すると奥から数本の矢が俺を目掛けて飛んできた。俺はそれを避けると、奥から剣を持った者が五人と、その後ろに弓を持った者が五人出てきたのが目に写った。


 ―雑魚がわらわらと。うざってぇ。


 俺は高速で剣を持った者の集まりに突っ込み、一人の両腕を斬り落とし、横にいた者の顔を回し蹴りの要領で蹴り上げる。その者は首の骨が折れてその場に倒れた。腕を落とされた者も叫びながら地面で暴れている。

 それを見た他の者達は驚いて固まっていたので、近くにいた三人の首を瞬時にはね飛ばした。そのまま回転し、浮いた頭を蹴り飛ばして、後ろの方で弓を持った者の顔面にヒットさせた。その者は倒れて、動かなくなった。


「う、うぁー!化物だ!」


 その様子を見た弓を持った者達は奥へ逃げ出す。


『石の弾丸』ストーン・バレット。」


 俺は土術で石つぶてを作り出し、逃げる者達に向かって高速で飛ばした。石つぶては頭を撃ち抜き、逃げ出した者達は一斉に倒れた。


「腕がぁ、腕がぁ…。」


「…うるせーなぁ。」


 腕を斬り落とされた者の叫び声が煩わしかったので、喉元に刀を突き刺して、止めを刺した。


 俺は歩き出し、顔面が潰れて倒れている者の喉元にも刀を突き刺し、先へ進んだ。


 奥へ進むと十五名の盗賊が一つの扉を守るように集まっていた。その盗賊達は全員弓を構えている。


 そのうちの一人が口を開いた。


「てめぇ。一体何モンだ!」


「おまえらがさらった人達はどこにいるんだ?」


「質問に答えろ!何なんだてめぇ!」


 盗賊の怒鳴り声は洞窟で反響し、頭に響く。それがすごく不愉快だった。


『石の弾丸』ストーン・バレット。」


 俺は石つぶてを一つだけ作り出し、瞬時に飛ばして怒鳴る盗賊の頭を撃ち抜いた。その盗賊は頭から血を吹き出し倒れた。


「もう一度聞くぞ?さらった人達はどこにいる?」


「…てめぇ!!」


 盗賊達は一瞬沈黙し、すぐに弓を構え直す。


「…もういい。『岩塊』ザ・ロック。」


 俺は直径十メートル程の岩を作り出し、それを盗賊に向かって飛ばした。


「う、うわ~!ぐぎゃ!」


 盗賊達は岩に潰され、変な断末魔をあげる。岩は奥の扉を突き破って止まった。


 俺はそのまま進み、作り出した大岩を分解した。

 扉の奥には三十人程と頭らしき者がいた。


 ゲルド (ヒューム) Lv 57 ジョブ 野伏レンジャー

 HP 6800/6800 MP 3700/3700

 攻撃力 510 防御力 460 魔力 320

 器用さ 610 素早さ 580 成長度 7.0

 耐性 毒Ⅱ 麻痺Ⅱ 暗闇Ⅴ

 スキル 気配遮断Ⅳ 気配察知Ⅳ 暗視Ⅳ 罠解除Ⅴ

 双剣術Ⅴ 短剣術Ⅳ 弓術Ⅲ

 EXスキル ーーー

 加護 ーーー


 ―弱いな。


「おまえがこの集まりの頭か?」


 俺はゲルドと言う男に声をかけた。


「さっきから暴れてたのはおまえか。」


 ゲルドの見た目は、スキンヘッドで目付きが悪く、目元に大きなキズがあり、盗賊らしい顔つきだ。


 ゲルドは部屋の奥の壁際に腰掛け、片肘を付きながら俺を睨む。

 その部屋には裸になった女性が数人、横たわっており、そのうちの何人かは事切れているようだ。

 良くみると、身体中にアザがあり、顔が原型を留めないほど腫れ上がっていた。


「はは。この女共が気になるのか?さらった奴等は大抵売っぱらっちまうんだが、気に入った奴等はこうやって遊ぶんだよ。」


「近くの村からさらった人はどうした。」


「村?あぁ、そういえば一人いい女がいたな。その倒れてるどれかがそうだ。顔を潰しちまったから、もうどれかわかんねーな。」


 ゲルドはそう言って笑い出した。


「…下衆め。」


「…ち。つまらねー反応だ。おめぇら!やれ!」


 ゲルドがそう言うと、部屋にいた盗賊達が一斉に襲いかかってきた。


『死の釘山』デッドリー・スパイク。」


 俺は土術を使って、地面から無数の大きなトゲを作り出した。

 そのトゲは盗賊達を次々と突き刺していき、ゲルド以外は一人残らず串刺しになった。


「な…あ…?」


 ゲルドはその光景に驚き、もはや声も出ていない。


「他の盗賊団の所へ案内しろ。そうすれば生かしてやる。」


「わ…わかった。だから頼む。殺さないでくれ!」


「あぁ。殺しはしない。」


 俺はそう言ってゲルドの両腕を斬り落とした。


「ぎゃぁぁぁ!う、腕がぁ!!」


 ゲルドは地面をのたうち回っている。俺はただその様子を眺めていた。


「こ…これは…。」


 そこへ騎士団と護衛の男達が入ってきた。


「兄さん…これ、兄さんが一人でやったのか?」


「先走って悪かったよ。そこで転がり回ってる奴が他の盗賊団の元へ案内してくれるそうだ。」


 俺はそう言ってゲルドの処理を騎士達に任せ、倒れてる女性を見て回り、生きている者にはポーションを飲ませた。


(…たった一人でこれだけの数を…それも無傷で…。『災害』を討伐したのは本当だったのか…。)


 騎士と護衛の男達は青ざめた顔をしていた。


 俺達は生きている女性を保護し、一緒に亡骸も回収して村へ戻った。


 思ったより保護対象が増えてしまったので、部隊の中から五人選出し、村人の埋葬後、保護した者達を国へ連れ帰ってもらう事にした。

 回収した女性の亡骸も村へ一緒に埋葬する事になった。


 そして一人の亡骸を、ロイは見つめていた。

 その亡骸はロイの姉だったようだ。


「すまない。助けてやれなかった。」


 俺はロイの肩を叩き、姉を救ってやれなかった事を謝罪した。


「ううん。お兄さん、仇を取ってくれてありがとう。」


 しかし、ロイは涙を堪えながら、そう言って首を横に振る。


「…ロイ。負けるなよ。」


 俺はそう言ってロイを抱き締めてやった。

 ロイは必死に涙を堪えるが、ボロボロと涙がこぼれ落ちてしまっている。


 ―家族が死んでしまったんだ。そんな時くらい、泣いてもいいんだぞ。


 俺はロイを離し、一人にしてやろうと思い、分隊長の元へ向かった。


「…あの子は大丈夫なのか?」


 分隊長はロイの様子を俺に聞いてきた。


「あぁ。けど今は一人にしてやってくれ。それより、次の目的地は決まったのか?」


「…あぁ。次はここから北東にある『黄金の谷』ゴールド・バレーだ。準備でき次第出発しよう。」


「わかった。」


 こうして俺達はロイと保護した女性を五人の騎士に託し、村を後にした。





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