「喝采」(昭和47年 1972)ちあきなおみ

 昨夜、久しぶりに、職場の同僚とカラオケに行ってきました。職場でのある企画の打ち上げを兼ねての開催ですが、うちらの場合は、二次会ではなくて、スーパーの惣菜や出前ピザかなんかを持ち込んで最初からカラオケ屋でやっちゃいます。

 まあ、最初の1時間くらいはお酒を呑みながらお話して、やおら、そろそろ唄うやる?って感じで始まります。

 うちらは、カラオケで唄うやることを隠語で「Spark⚡する」と呼んでいますが、昨夜も、いいスパークっぷりでした(笑)

 Spark⚡の会には、たった一つだけ会則があります。それは、「歌いたい歌を唄う」というものです。前後の曲の雰囲気やら、ジャンルやら、空気を読む、とかは一切考慮しないで、自分がその時に唄いたい歌だけを唄う、というものです。


 此処に書き込んでいるように、昨夜も何曲かの女性歌手の曲を唄いましたが、改めて、難しいな~と思った次第です。音程キーさえ合えばいいかっていうと、やっぱりそうじゃなくて、その曲で伝えたい想いまでを表現することって難しいわけです。もっとも、難しいからこそ、プロの歌手がいるわけですが。


 さて、今回、取り上げるちあきなおみの名曲「喝采」でありますが、当時、物心がある以上の年齢の方なら誰もが知っている曲です。昭和47年の9月にリリースされて、3カ月後の日本レコード大賞に輝きましたが、これはどうやら最短記録らしいです。


♪あれは、三年前


 このサビのフレーズは、子どもでもすぐに覚えて、ドリフのコントなんかでも使われました。

 しかし、歌詞を見てわかる通り、とても哀しい曲であります。しかも、時間のトリックすら仕込まれている精巧な歌詞です。


♪いつものように幕が開き 恋の歌うたうわたしに

 

 そんな私に訃報が届きます。3年前に、引き留められたにもかかわらず振り切った元恋人の死です。聴き手は、その訃報が届いたことも、教会での葬儀に出たことも、今現在のことだろうと思います。しかし、最後の最後で、それらはすべて過去の回想シーンであることに気付かされます。恋を捨てて、恋人を亡くして、自分を責める想いに苦しみながらも、恋の歌を歌って喝采を浴びているのが女の今現在である、のです。

 そんな辛い思いをに出すことなく、女性歌手は恋の歌を歌い、万雷の喝采を受ける、そんなプロ歌手の機微をこの曲は表しています。


 果たして、当のちあきなおみに、この歌詞とリンクするような実体験が当時あったかどうかは不明ですが、歌っている彼女の姿を見ると、鬼気迫るものがあります。

 動画を見てもらえばわかりますが、曲の最初から1コーラスが終わるまで、彼女は瞬きをしないで歌っています。もしかして、当時の歌手は、テレビカメラが回っている歌唱ではそう躾けられたのかもしれません(山口百恵もそういう歌い方をしていた時期がありました)。しかし、この曲の内容と瞬き無しの歌唱は、聴き手が意識していなくても、かなりのインパクトを与えていたはずです。


 さて、歌詞で、もうひとつ、お話します。


♪あれは3年前 止めるアナタ駅に残し

 動き始めた汽車に ひとり飛び乗った


 というフレーズがありますが、若い方だと、「動き始めた汽車にどうやって飛び乗るのか?」という疑問を持つ方がいらっしゃるだろうと思います。


 私も覚えがありますが、ディーゼル機関車や電気機関車が客車を引っ張るタイプの当時の汽車の多くは、ドアが手動開閉だったのです。ドアが開きっぱなしで走行するのもちっとも珍しくなく、走り始めた汽車に、遅刻をしたくない高校生がホームを走って飛び乗る、なんてよくある風景でした。

📺手動ドアの列車の動画  https://www.youtube.com/watch?v=6sSUQdhyJiE&t=8s




♪「喝采」(昭和47年 1972)ちあきなおみ

 作詞:吉田 旺 作曲:中村泰士

https://www.youtube.com/watch?v=1qjQNouI6dM(動画)

https://www.youtube.com/watch?v=oyb-rUtxYK0(静止画 フルコーラス)

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