第5話 出会い(4)

バークレー。

大きな大学を街の中心にして発展した学園都市。

SFの中心地からちょっと外れた小さな街。

ゆったりとした広いスペースに平屋の住宅が軒を連ねている閑静な住宅地。

ここで少年時代を過ごした。この街に住んで15年以上が過ぎた。

今でこそNYに生活の拠点を移したものの、やはり生まれ育った街は懐かしいものである。バーンが生まれてからずっと過ごしていたこの街はどこに何があるか、誰が住んでいるかはおおよそ見当がついている。

学生の頃よく行ったデリカテッセンに彼女を伴ってやってきた。テイクアウトの惣菜を量り売りしているカウンターの奥が、小さなレストランになっていた。

カウンターの上には大きな長いソーセージがぶら下がっていたり、薫製にされた鳥がつややかな色をライトに反射させながら飾られていた。

ラシスはひとり一番奥にあるテーブルについて、アレックスを待っていた。

店は夕方ということもあり、客足が途絶えることなく活気があった。

「お待たせ。適当にみつくろってきたけど、いいかい?」

大きなトレイを持って彼が戻ってきた。皿にはサンドウィッチやフライドポテトなどがのっていた。丸いテーブルに向かい合わせに座り、トレイを置き、飲み物を差し出した。

「なんでも。あ、ありがとう。」

そういいながら、彼女は大ぶりのガラスのコップに入れられた飲み物を受け取った。

「グァバでよかったのか? アルコール系の飲み物でもいいんだぜ?」

「いいえ、飲めませんから」

「すまないけど、俺は飲ませてもらうよ。」

そう言って、バドワイザーの瓶を自分の前に置いた。アレックスはそのまま飲みもせずにじっと瓶とその視界に入っている彼女を見て、すこし険しい顔をしていた。

「さてっと何から話せばいいんだか」

ラティもグラスを持ったまま少し緊張した面持ちで彼を見ていた。

「あいつの噂は聞いたことがあるかい?」

「噂?」

「ああ。」

「? あの噂ですか。彼のまわりで起こる不可思議なことですか? 彼のまわりにいる人は死んでしまうとか、悪魔だとか、」

「君はその事をどう思う?」

「………」

「本当のことだと思うかい? それともただの噂だと?」

「………」

少しうつむいて彼女は考えた。

「右眼のことは?」

「知っています。オッド・アイだって」

「そうか。」

「見ました。あの金色こんじきの右眼を」

「気味悪くなかったかい?」

「そんなこと! どうして実のお兄さんがそんなこと言うんですか!?」

ラティはすごい剣幕で怒りだした。

ふっとアレックスは表情を和ませ、笑った。

「わざと怒らせるような事をいってすまない。ちょっと聞いてみたかったんだ。君があいつのことをどう見ているか」

「………」

「聞いてくれるかい。あいつの、いや俺たちの生い立ちを」

そう言ってアレックスはバドワイザーをひとくち、口に含んだ。

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