熱狂となり伝播する意志の核、個人の中の小さな妄執

やがて女王と呼ばれることになるとある傷痍軍人のお話。あるいは、戦争を含むひとつの歴史。
面白かったです。とにかく物語の作り方が巧みで、お話にグイグイ引き込まれました。
ひとりの女性の生涯を、語り部による口授という形で記した物語。しかし起こっている出来事の規模を考えたなら、これは彼女の物語であると同時に、この世界における歴史の一側面であるとも言えます。
時代の潮流が、世界規模の狂騒が、そのまま彼女の内面に収斂されていくような感覚。小さな個を通して見る大きな歴史。個人と世界の接続とそのスケール感に、ただひたすら打ちのめされました。
一番好きなところは、「そのあとは、きっともう知っているね。」の一文。そのひとことにより省略された、おそらくは彼らにとっての〝周知の事実〟。それが歴史的事実として前提となっている、その(語られている相手の)感覚との解離。
なんか頑張ってそれっぽいこと言いましたが、正直うまく言えません。とにかく好きです。あらゆる方向から、ときに思いもしないところからも心を揺さぶってくる、死ぬほど〝強い〟物語でした。

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