第17話 A GIRL BROUGHTED UP BY SHARK

 アレクサンダー・ジョーンズ三世とメガン・モクスリーとヒカリ・アローナ。この三人の人生は弱冠五歳にしてたった一人で生きていくことを余儀なくされたという点で共通していた。但し、ヒカリは自ら望んでそうなった、アレクとメグは『ほおりだされた』という点が決定的に異なる。

 アレクが家出してすぐに鮫魔王に引き取られたり、ヒカリが幸運にも(?)ロリコンスナックの変態店長にスカウトされたのに対して、メグはおよそ二年の時を一人で生きた。

 彼女が生き抜いたのはワイマナーラ海上スラム。

 野蛮なヒューマン族のみが住むブルー・リージョン最大の地獄都市にて。彼女はその潜在能力を覚醒させ、殺されることも犯されることもなく、時にゴミを拾い、時に強盗をし、時にネズミを喰らって生きた。いつしか彼女は『地獄姫』と恐れられるようになった。

 だが。やがてそんな生活にも終わりが訪れる。

 鮫魔王軍が侵攻してきたからだ。

 野蛮なだけで特別強いわけでもない住人たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。

 そんな中。ただひとり『地獄姫』のみが最後まで闘い、とうとう鮫魔王にまで牙を剥いた。

「――この子は連れて帰ろう」

 魔王は自分のふとももに深々とナイフを突き立てる少女のアタマを優しく撫でた。

「ええええ? こんなに小さな女の子をメカケにするんですか?」

「ロリコンの獣姦マニア」

「いよっ! 変態大魔王!」

「バカか! 戦力にするために決まっているだろう」

「でもいいんですか? 人間ですよ。その子」

「ガハハ! そんなこと関係あるか。ワガハイは勇気があって将来性があるヤツが好きさ」

 少女を優しく肩にかつぎのっしのっしと歩きだす。

 彼女は初めは暴れていたがすぐに大人しくなり、やがてすやすやと眠った。


 ――それから。

「おーいアレク。貴様に初の任務を与えるぞ」

「なぁに~?」

 魔王城すぐそばの海岸でぱちゃぱちゃと遊んでいる、小さな人鮫族の少年を呼び止めた。

「おまえの任務はな。この娘を笑顔にすることだ」

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