第31話 胸がつかえる女
『更年期障害』という言葉ほど、
便利な病名はない。
病気のコンビニだ。
ないものがない。
頭痛、
胃痛、
腰痛、
肩こり、
めまい、
吐き気、
脚の痛み、
息苦しさ・・・。
そして最近彼女は胸がつかえるらしい。
胸に大きな塊があるのだと言う。
どこに行っても、なにをやっても異常はない。
彼女は悩んでるふりをしながら、
とてもうれしかった。
異常がないのに具合が悪い。
こんなに幸せなことはない。
だって、今日も一日寝ていていいのだから。
彼女には塊の原因はわかっていた。
この塊は、
『リアル』なのだ。
ほんとうに言いたいこと
ほんとうにやりたいこと
ほんとうにいきたいところ
ほんとうにみたいもの
ほんとうにききたいもの
それを封印して生きると決めたのだから、
塊くらい、我慢しなくてはならないのだった。
何故封印したか?
そんなの良妻賢母として当たり前でしょう。
彼女の中の塊は、
あちこちに身体を移動して、
暇を持て余す。
しかし、塊の我慢にも、
限界というものがあることを彼女は知らない。
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