第33話 中里織絵

私達はあの後、入院した。

私は脳振とうをおこし、首に鞭打ちを負い、頬骨が砕けたらしい。


病院の鏡を除いたら右の頬が青黒くなっていて気持ちが悪い。


これがなくても、もう誠とは終わりだろう。


旦那は病床で『いむあ(しむら)…いむあ(しむら)…』とうわごとのように繰り返しているらしい。


完全に聞かれていた。

何故あの場で不用意に「誠くん」などと…。


とりあえず旦那は重傷らしいのが救いだった。

しばらくは顔を合わせずに済む。


こんな時、本当に子供を作らなくて良かったと思う。


変な縛りがなく、おまけに私には看護師と言うつぶしの利く資格がある。


女一人でも充分生きていける。


旦那には悪いが、退院したら離婚の準備に入ろうと思う。

別に不倫の物証を残したわけではないから離婚慰謝料も取られる事は無い。


が、今回のことで再認識した。

毅と言う男は直情的で私とは合わない。


不倫を疑って視野が狭まるなど偏執狂な面もあるし、一緒にいたら何かと息が詰まりそうだし、何より私は男漁りをやめられるきがしない。


山口さん、もし無事に退院して職場復帰出来たならだが、私なんかどうよ?



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