第7話 中里毅

ナイスだ織絵。さすが我妻。

『そうですよ、救急車!なんで気が付かなかったかな。』

俺は声を上げた。山口め、さっさと救急車で運ばれてしまえ。

そして車のキーを寄越せ。


『…いや、救急車は…ちょっと苦手で…。』



一瞬この場の時が止まった。


山口を除く四人の共通の気持ちを文字で起こすと

「は?」

の一言である。

救急車に苦手も糞もあるのか?

パトカーならまだわかる。こいつは過去にも悪さをしていそうだから。


もう決定したようなものだ。

山口、貴様やはり車に何か証拠を隠しているな。 


貴様は織絵と…!


『苦手もなにもないでしょう!?この状態を我慢する以上に嫌なことですか!?』

俺は畳み掛ける。

 

『いや…本当…ウチの母方父親……歴代爺さん婆さん救急車の中で亡くしていて……。』

と山口。


なんだそれは。そんなトラウマ聞いたことがない。どれだけナイーブな子供だったのだ。 

なら病院で看取っていたら医者にもかかれないではないか、車に轢かれていたら運転も出来ないではないか、その理屈だと。


中里はボルテージが上がっていくのを自身でも感じていた。

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