第3話

放課後、いつものように私は担任に雑用を押し付けられる。

今日は図書室の整理だそうだ。


コーヒーのむせ返るような濃厚な香りの充満する職員室。

教師と名乗る彼らはいつも私の方をちらりとだけ見ると、また自分たちの話に舞い戻ってゆく。


その様子はまるで優雅な蝶のようだと、職員室のコーヒーの香りを嗅ぐ度に私は思う。


こんな私のような生徒の担任になってしまって心底可哀想だと憐憫の念を抱く。

そうやって担任を見ていると、生意気だと言って私を叱った。


けれど、私は知っている。

私の担任がこの職員室という混沌とした狭い世界において一番格下であることを。

私のいるクラスを受け持ったがためにそうなってしまったことを。


だから担任はいつだって何かしら雑用を抱えていて、そしてその原因である私に言い付けるのだ。


とんだ格差社会ですよ、奥さん。いやですわねぇ、今の日本は。

だから私は、脳内井戸端会議を行いながら、図書の整理をするしかないのだ。


学校の図書室はいつも埃っぽい。

ほとんど利用する人がいないのだから、仕方がないと言えば仕方がないのだろう。


まだまだ終わらない本の山を見て、私は溜息をつく。

はぁ、こんな時に図書室の妖精なんかが出てきてくれたらなぁ。


そんなことを考えていたからだろうか。

その直後、図書室の扉が開いて一人の男子生徒が入ってきたとき、私は本当に妖精が助けに来てくれたのだと思った。

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