神サマ、出テオイデ

鈴木ムク

0 暗黒の宇宙を進む

 暗黒の宇宙を進む銀河系探査機の絵。いま見ると、あまり巧いとは言えない。

 子供のころ、ぼくはマンガ家になるのが夢だった。アイディアが次つぎとわいて、もしかしたら天才ではないかと思ったこともあるが、一つのマンガを描き終わらないうちに次のマンガにとりかかるので、ちゃんと完成したものは一つもなかった。


 なにも始まらず、なにも終わらない。探査機はいまも同じ宇宙の暗黒の中を進んでいる。


 墨ベタの上にホワイトで描かれた無数の星や星雲、不格好にアンテナを広げた探査機が浮んでいる。そして画面右上の吹き出しには、ナレーションの言葉がエンピツで書かれている。


    *

 あらゆる力をつくした太陽系調査の結果、地球以外には生物とよべるものがどこにも存在しないことが確認された。

 地球は孤独である。

 人類は外宇宙へ向けて無人宇宙探査機を打ち上げた。

 宇宙の暗黒のなかをひたすらつき進む探査機は、大銀河の中心部へ向けて次のようなメッセージを流し続けた。


 「ミンナ

  ミンナ サミシイ

  神サマ 出テオイデ」

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