昔ながらのゲームキャラクターに居場所はないのですか

@rakugohanakosan

第1話ユウシャちゃん全滅して教会でよみがえる

「よくきたな勇者らよ。貴様らのはらわたをくらいつくしてくれる。食らえ、魔王様の特権、全体ブレスと全体魔法の連続二回攻撃だ」


 ビュホオオオオ!!! ドッカーン!!!




「おお勇者よ、死んでしまうとは情けない」


「あ、シンカンさん。お久しぶりです。シンカンさんがその決まり切ったセリフを言うってことは、またあたしたち全滅しちゃったんですか」


「その通りだよ、ユウシャちゃん。何度も何度もユウシャちゃんたちが全滅してこの教会に担ぎ込まれてくるから、わたしもユウシャちゃんたちにすっかり愛着がわいちゃったよ。だから、『勇者』なんて肩書きで呼ばずに『ユウシャちゃん』と名前で呼ぶようになっちゃったよ」


「あたしもです、シンカンさん。やっぱり、神官さんなんてかたっ苦しいですよねえ。でもですね、今回は魔王城の魔王の玉座まで到達したんですよ。開幕先制全体二回攻撃でやられちゃいましたけど」


「ほう、ついにユウシャちゃんパーティーは魔王のところまで到達したのかい。序盤の敵のスライムに全滅させられてぴいぴい泣いていたのがついこの前だったのにねえ」


「やめてくださいよ、シンカンさん。そんな昔の話は」


「そうかい、ユウシャちゃん。それで、センシちゃんにソウリョちゃん、そしてマホウツカイちゃんを生き返らせるのに一人当たり教会への五百ゴールドの寄付が必要だよ」


「五百ゴールドですか、シンカンさん。前はもうちょっとお安かったような気がするんですが……」


「ユウシャちゃんたちもレベルアップしたからね。それに応じて寄付金もお高くなっていくんだよ」


「あたしの持ち金は……どうしましょうシンカンさん。三百ゴールドとちょっとしかありません。これじゃあ一人も生き返らせることができません。なんで全滅したら所持金が半分になっちゃうんですか。そうじゃなかったら六百ゴールドはあったから、ソウリョちゃんをとりあえず一人生き返らせることができたのに。そしたらソウリョちゃんの蘇生呪文でセンシちゃんもマホウツカイちゃんも生き返らせることができたのに。ねえ、シンカンさん、教会への寄付金、もう少しなんとかなりません」


「だ、だめだよ、ユウシャちゃん。そんなふうにかわいい女の子がかわいい顔を涙目にしてお願いしてきたって。わたしも自分が女の子のくせに可愛い女の子には弱いけど……でもダメダメ。そんな信仰をディスカウントするような真似はできません。主の言うことは絶対なんですからね」


「でもお、シンカンさん。足りないお金はどうすればいいんですか。ええと、これまで全滅した時はどうしてたっけ。このあたりのスライムを倒して回るのも今更弱いものいじめみたいになっちゃうし……」


「そんな時は、いつも武器屋さんに行ってアイテムを売り払ってお金にしてるでしょ。魔王のところまで到達したってことは、そこまでにたくさんモンスターを倒したんでしょう。だったら、モンスターからのドロップアイテムもいくつかあるんじゃない」


「あ、そうだった。ありがとうございます、シンカンさん。えーっと、アイテムアイテムっと……うう、薬草や毒消し草ばっかり。モンスターって、大したアイテム落としてくれないんですよね。いっつもこんな薬草みたいなのしか落とさないの。で、お店でちまちまひとつひとつ売らないといけないんです。本当に面倒くさいんだから。まとめて売り買いできたら便利なのに。それに魔王城のモンスターなんだから、もっといいアイテムドロップしてくれてもいいのに。一個何百ゴールドもするような武器とか、防具とか」


「まあまあ、ユウシャちゃん。それでも、薬草と毒消し草を売れば五百ゴールドには手が届くんじゃない、それでソウリョちゃんを一人生き返らせればいいんじゃないかな。そうすれば、ユウシャちゃんが言った通りセンシちゃんにマホウツカイちゃんをソウリョちゃんの蘇生呪文で生き返らせることができるじゃないか」


「それもそうですね、シンカンさん。今回もとりあえずあたしだけは生き返らせてくれてどうもありがとうございました。それじゃあ、急いでお店屋さんで五百ゴールド作ってきますから、それまで待っててくださいねシンカンさん。こうしちゃいられない、大至急で行ってこなきゃ」


 ダダダダッ!


「やれやれ、ユウシャちゃんったら、あっというまに外に出て行って、もう姿が見えなくなっちゃったよ。それにしても、今のユウシャちゃんが持っていた有り金が全部で三百ゴールドとちょっとかあ。全滅すると所持金が半分になる。ってことは、魔王軍は三百ゴールドとちょっとで魔王城の最深部から、この教会までユウシャちゃんたち四人パーティーを運んできたってことか。それこそ、リーズナブルなディスカウントもいいところじゃないか。魔王様も、手間ひまをかけてくださることで」

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