霊が見えるからって日常が変わりすぎでしょ!

呼霊丸

第1話 初めての心霊部門

雲闇英二郎(34歳)、某大手製薬会社へ営業として入社してから10年、取引先の病院で親しくなった病院関係者と霊の話をしていた時に、うっかり霊が見えることを話してしまったことが発端だ


その話に尾ひれがつき、やがて気味悪がられるようになり、それが同僚や上司の耳に入り会社内で外部との接触がない部署へと配置転換された、表向きには左遷だと考えていたのだが・・・


入社して以来、地下1階には何度か足を運んだことはあったが、ここから更に地下があるなんて考えてもいなかった


「本当にこんな場所に部署があるのだろうか・・・」


≪関係者以外立ち入り禁止≫


「俺って関係者・・・だよなぁ・・」


地下へ続く階段はあるのだがすでに薄暗く異様な雰囲気を漂わせている


階段を降りるといくつかの部屋の扉があるのだが明かりが付いているのは1つだけだ


「心霊部門?」


自分が聞かされていたのは地下の物品を検品する所だと聞いていたが・・・


「すいません、今日こちらへ配属になった雲闇英二郎と言いますが・・・」


すると奥に座る責任者らしき人物が返事をしてくれた


「おお、君が雲闇君かよろしく頼むよ、なんせ人出はいくらでも欲しいのだが霊が見える人物は貴重でね、忙しくなると思うがよろしく頼むよ」


「は、はぁ・・・」


「早速だが、今ここにいる人物を紹介しよう、主任の宮地雪音、倉庫整理の亀ノ井悟だ、あと外に出ている者もいるが居る時に紹介するとしよう」


宮地雪音はひたすらに何かに釘付けになっておりこちらを見ようともしない


「すいません、宮地先輩は自分の世界に入ってしまうと他人の言葉なんか耳に入らなくて・・・、俺は亀ノ井悟21歳、よろしくお願いします」


「おお!やっぱこのレントゲンに写る顔は子供なんだろうか、実に尊い存在だ~」


「あははは、宮地先輩は子供の霊が大好きでいつもああなんですよ・・・」


「無垢な魂はどんな宝石より輝いている!君たちもそう思わないかい、こっちに写っているおっさん顔の霊なんて不愛想で可愛さのかけらもない、偶には笑顔のおっさんの心霊写真なんて見てみたいものだよ」


「私は宮地雪音です、私より先輩ですよね・・・よろしくお願いします。」


「雲闇英二郎です、よろしくお願いします。」


「英二郎君、早速で悪いのだが悟君のお手伝いを頼むよ、なんせ色んな所から送られてくるから仕分けが大変でね」


「先輩こちらです」


別の部屋へと案内される、そこには全国の営業所から送られてきた荷物で一杯だ


「これは全国から送られてきた変な物のたまり場なんですよ、送られてくる物は人の顔らしき姿が映ったレントゲンやその時に使われたレンズ、個人情報が含む訳ありのカルテや写真など、通常では説明が使いないような不思議な物ばかりです。」


「そういえば英二郎さんは霊が見えるらしいですね、自分も含め今いる人たちは霊感がなくてさっぱりなんですよ、ここの中でなにか感じます?」


英二郎も霊が見えることはあるがそこまで敏感ではない


「特になにも感じないですね」


「そうですか、なら安心してよさそうですね、見えないから余計に気持ち悪くて」


「外に出ている人たちも少々怪しい感じもしますし、頼りにしてますよ先輩」


任せてとけとは流石に言えないな・・・


悟君のお手伝いをしながらリストに付けながらいろいろな物を観察している、中には動物が乾燥したような少しカビ臭い物まで入っている


リストに記載した物は別の倉庫へと移動する、倉庫はいくつもあり開いた棚に収めていく


ただここに来てから気になるのが第二倉庫だ、ここからはなにか異様な空気が漏れているような感じがして扉の前に立つだけで鳥肌が立つ


≪ここだけは入りたくない、本能がそう感じている≫


物品整理だけで1日が終わってしまった、物品を検品する部門かあながち嘘でもなさそうだ、今までの忙しが嘘のようだ、こんなことで給料がもらえるなら満更悪くないなと考えていた自分が甘かったのだと後に思い知らされてしまう。

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