第13話:LGBT③

「実は君はお父さんを愛しているわけではなく、憎んでいるんだ」

「え?」

金成の言葉に喉を詰まらせるしかなかった。

「何を言っているんだ?僕は父親を愛しているんだぞ!」

「違うと思う。君にそんな感情はない。万に一つあるとしたら、それは愛情ではなく憎悪だ」

勿論全ての種族に対して、そのようなことは思うことはない。だが、彼の場合は所謂独占欲に強いのである。子供の頃から相手にされなかった憎しみを愛情を持って接しようとしていたのであった。愛のカタチにこれといった決まりはない。しかし愛し合うだけの形に理由はなくても、そこに至るまでの過程は存在しているのである。何故彼は同性愛に目覚めたのか、それは幼き頃の葛藤からである。

幼き頃の強烈な記憶が、苦痛がそれらを凌駕し、同性愛へと到達したというわけである。父親にべったりな理由はいくつかあるのだろう。しかしこの年齢になってもまだ離れられないことには、それなりの訳があるということだ。

「僕は・・・何を愛すればいいのだというんだい?」

「愛を求めているだけではいけない。愛を求めたければ、まずあなたから愛しなさい。それが本物の愛というものである。偽りなく、思うがままに」

金成は彼にそう言った。彼は大きく泣いた。

彼にとっての呪縛、そして過去現在未来に対しての劣等感、誰にも共感されない孤独。

最近LGBTの動きというものが活発になってきている。理解されたい世界へと進んでいく。しかしそれでも、壁はぬぐい切れない。4つの壁に潜む「宗教の壁」世間の目というものは恐ろしく彼らを付き纏い、いつしかそれが自身の記憶へと膨張する。

だが彼の愛は未だ歪みがあるわけではない。歪んだ愛情とならば、それはもはや束縛以外のなんでもないのだ。

「まずは自分自身を認めてあげなさい」

金成はそう言って立ち去った。


愛のカタチは人それぞれだ。

しかしそれを周りに認めてもらうことを前提に考えてはいけない。

まずは自分が認めることだ。それから相手に認めてもらうことだ。

だが、この壁は超えることは厳しいのだ。それは「戦争」をも意味するからだ。

「何をもってして愛と受け取るか、それはもはや自分にしか分からないものだ」

金成にとっての「壁」というものも、目に見えるもの、そうでないものに分かれていると自負している。

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