渡辺 美羽Ⅱ

「ガシャン」

私はこの音を聞いて目が覚めた。朝になってる。正確には深夜に近いかも。私の時計の短い針は3をさしていた。私は体を起こして窓の外を見た。外には家から出てきた徹君がいた。徹君は制服のままで肩からカバンをかけていた。中に何が入ってるかわからなかった。彼は周りをきょろきょろして右の方へ行った。駅の反対側だ。どこに行くか気になり急いで制服に着替え外に行った。徹君の姿はまだ見えていた。私は徹君から3メートルほどの距離をとって、あとを追った。徹君は左に曲がった。

確か左には大きな公園があったはず。公園の隣には川がある。川沿いに桜の木が並んでとてもきれいだが、今の季節は秋だ。もうすぐしたら冬になる季節だ。桜にはなにもついてないはず、何のために公園に行くのだろう。私はさらに気になり、あとを追った。追っていくとそこは、やはり公園だった。私は大きな木の陰に隠れて徹君を見た。徹君は近くのベンチに座って、カバンから何かを取り出した。スケッチブックだ。彼は鉛筆を動かし始めた。何を書いてるかわからない。私は、自分が薄着だと気づいた。今はとても寒い。私は徹君が見てそうなところに目をやった。そこには、霧が少しかかり、桜の木が少し見えにくいが、それがとても綺麗だった。私は、徹君に少し声をかけてみようと思った。私は隠れていた木から姿を出し、徹君に気づかれないように、徹君の背後に回った。私は徹君の肩を軽く叩こうとした。でも徹君が触られるのがダメなのを思い出し、ベンチの背もたれを「コンコン」と指で鳴らした。徹君は慌てて後ろに振り向いた。徹君は

「うわぁっ!」

と声を上げベンチから立ち上がった。

「なんでこんなところに朝早くにいるんだよ」

徹君がそう尋ねてきたので最初から話してあげた。そしたら徹君は

「それって、ただのストーカーだよな。警察に訴えてやろか」

と徹君が冗談で言ってきた。私は

「こんな朝早くにどこに行くか気になるに決まってるじゃん。だから私は悪くないと思うけどな。それに幼馴染として、もっと徹君の事、知りたいし」

私は少してれながら、そう言った。徹君の反応はなかった。徹君はため息を一つして、ベンチに座って、また絵を描き始めた。私は徹君のスケッチブックを覗いて、見てみた。私は驚いた。徹君の絵はすごく上手で私は

「うわぁー、すごく上手だ」

と小声で言った。徹君のスケッチブックには桜が何本も書いてあり、桜にはうっすら霧がかかっていた。徹君は私が今見ている景色を黒一色で描いている。私は徹君の邪魔にならないようにベンチに座ろとした。

「それ以上近づかないでくれ」

徹君にそう言われた。私はずっと立っていろということだ。私がため息をこぼした後、徹君がこちらに振りむいた。私は少しだけ期待した。

「暇だろ。そこに立って。お前より背が高い人がいるのを想像して、少し顔を上げる。あと、カバンを持っている感じに手を肩まで上げて」

なんと徹君から、私をモデルに誘ってくれた。私は徹君に言われたとおりに立った。だけど、徹君は少し悩んでいた。そして、徹君は自分のカバンを取って、私に渡した。

「これを肩から掛けて。その方がイメージしやすい」

と徹君がカバンを渡してきた。私はカバンを受け取ろうとすると徹君がカバンを私から遠避けた。私は最初は私に意地悪をしていると思っていた。徹君が何回もそれをしているから、

「すまん、体が言う事を聞かない。だから、お前をからかっているわけでない」

やっと、私は理解をした。徹君は私にカバンを渡したいのだが、私が女子だから、反射的にカバンを渡さないよになっていた。私は頑張って、徹君からカバンを取るようにして、やっとカバンを手に取った。だが徹君はカバンを離さなかった。カバンの引っ張り合いは、5分ほど続いた。だが、徹君がやっと離してくれた、徹君はすぐにスケッチを始めた。私はさっき言われたとおりに立っていた。それを30分ぐらい同じ姿勢で立っていた。すると徹君が立ち上がった。終わったみたいだ。私は徹君にカバンを返した。

「絵は完成したんだよね。見せてよ」

私は徹君に問いかけた。徹君は無言でスケッチブックをカバンから取り出し、ペラペラとページをめくって、書いていたページを私に見せてくれた。やはり、上手だった。完成した絵には私が描いてあった。しかも細かく。私は徹君が私を見てくれた事が少し嬉しかった。でも、私の前には私より背が高い、男の子が描かれていた。それは、徹君にそっくりの人だった。

「いつか、こんな風に向き合えたらいいな」

私は思っている事を口に出してしまった。私は慌てて徹君に謝罪しようと思ったけど、

「何言っての?今、向き合ってるじゃんこの絵の通りに。距離は違うけどな。あと、この絵は小説の最後のシーンの一部を描いただけ。文章にしにくいときは絵にしてるんだ。あと、勘違いするな。俺はお前が邪魔だったから帰れは酷いから、ヒロインになってもらっただけだ」

「素直じゃないね~。でも、優しいじゃん。学校の徹君と違って、今は」

私が徹にそう言ったら徹はよそを向いて、

「べつに」

と言った。照れているのかな?私は気になり、徹君の顔を覗き込んだ。その時、徹君がコツと足音を立てた時、足元にあった太めの木が宙に舞い、徹君がそれを手に取って、私に軽く叩いてきた。

「いたっ。何するの」

私は徹君に尋ねた。

「少し調子乗りすぎだ。それ以上、近づくな」

徹君は真面目に本気で怒っていた。ものすごく怖い顔をしていた。私は鳥肌が立ち

「はい、すいませんでした」

と答えた。徹君は持っていた木をポイと後ろの投げた。草原の方に落ちた。私は安心して、大きく息を吐いた。でも、確かにさっきは、徹君と向き合っていた。私は徹君が描くヒロインになれたかな?

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