第2話

カチッ カチッ カチッ


時計の進む音が静かに鳴り響く。


次の瞬間。

―リリリリリ


と、爆音で鳴る目覚まし時計の音。


その音に目を覚ます気配も感じさせずに、まだぐっすりと眠っているのは、


この時計の主である。


しばらくすると、下の階から、女性の声が近づいてくる。


「…起きなさ~い。今日、父さんに会いに行くんでしょう?」


その女性は、部屋を軽くノックし、「入るわよ?」と一声掛けると、


答えを聞かずに部屋の扉を開けた。


女性は、「また、夜遅くまで起きていたのね。まったく…」と、ため息をつきながら、まだ眠りから覚めない娘の布団を引きはがし、窓を全開にした。


もう、夜も冷え込むような時期のため、窓から入る風は冷たく。


少女は、すぐさま飛び起きた。


「つき。もう、起きなさい。約束の時間に間に合わないでしょう。」


つき、と呼ばれた少女は、目をこすりながら、まだ寝ぼけた様子だ。


「つき、今日、お父さんに会いに行くんでしょう。早く準備しなさい。約束の時間まで…」


そこまで聞くと、つきは目を見開いて、何か思い出したかのように、「あっ!」と、つぶやいた。


それから、「今何時。あと何分あるの?あぁ、もうなんで起きられないかなぁ。母さんもなんで起こしてくれないの。もう…」


と、早々にまくし立て、わやわやと着替えを始めた。


「もう、何度も起こしましたよ。今は、8:00です。起きなければいけない時間ぐらい把握しておいてくださいよ。あぁ、そうだ。ご飯出来てますからね。」


「母さん」と呼ばれた女性は呆れたようにそう言うと、扉を閉め、下の階に下がっていってしまった。


つきは、慌ただしく準備を整えると、下の階へ降りていき、朝ご飯を食べた。


それから、玄関から靴を持ち上げ、自室のある2階の窓から、屋根の上へ飛び乗った。


屋根の上から見下ろす風景はつきの大好物だ。


しばらく、外を見下ろしていた彼女の頬を


朝に比べると、暖かくなった風がぬぐった。


我に返ったつきは、時間がなかったことを思い出し。


隣の家、そのまた隣の家の屋根の上を伝い、目的地に向かった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る