ヤクザの嫁になったオタクな僕

藤間紫苑

第1話 血痕式 

 ◆


 血のような紅い満月が空を照らす。

 京都。二十三時。

 古い街並みが碁盤目状に広がる古都に、重厚な車が何十台と集まる。

 漆黒の車は古き街並みに溶け込んだ屋敷へと入っていく。屋敷へと集まる黒留め袖の女性達。

 言葉は少ししか交わされない。女性達は奥まった部屋の中にある階段やエレベーター、エスカレーターに乗り、地下へと向かう。

 大きな和室には金屏風が置かれ、年配者が金屏風に近い場所へと座る。広い和室の左右一列ずつに分かれる。中央には円柱と、畳の空間が三百畳ほどある。

 来客全員が座り終えると、越天楽が流れ始めた。

 それと同時に白無垢を着た二人の花嫁が現れ、金屏風の前に座る。

 紅い盃に神酒が注がれる。

 人々の視線が二人の口元に集まる。

 三々九度が行なわれる。

 神酒が二人の喉を潤す。

 新しく結ばれた二人は視線を絡ませ、微笑んだ。

 次の瞬間。

 白無垢姿の二人の花嫁は飛び、走り出す。

 それが血痕式(けっこんしき)の始まりだった。

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