第12話 夢の国からコンニチワ

 自分は生まれてこの方、東京ディズニーランドに行った事がありません。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンも、よみうりランド遊園地も、東京ジョイポリスも、浅草花やしきも未体験。各地の様子はテレビの情報番組を通してしか知らず、たまに他の人にその辺りを突っ込まれたりもします。


 しかしまあ、別段気にしてはいないのですが。地元の遊園地すら数える程しか行ってない出不精に、今さら東京遠征を敢行するだけのエネルギーは残ってません。第一、往復の飛行機代や宿泊費を払う余裕も無い。



 日本の大型テーマパークの走りと言えば、昭和五十八年(一九八三年)四月にオープンした東京ディズニーランド。それまでも似たような施設は日本各地に点在してましたが、何しろディズニーは外国資本、全てにおいて規模が違う。


 開園直後はテレビ・ラジオのニュースやワイドショー、新聞に雑誌とあらゆるメディアで大々的に紹介され、当然の如く大勢の入場者で賑わいました。


 しかし我が家の場合は、どちらかと言えば質素な暮らし向き。北の大地から本州に遠征するのは本当に大事な用件でもない限り無理で、ましてや遊ぶ為だけに出掛けるなど夢の夢。「うちには関係無し」の一言で片付けられました。実際、自分もミッキーマウスにそれほど興味は持っていなかったので、揉め事にもならずに会話終了。



 そんなこんなで、地元にある大きい遊園地やテーマパーク、アミューズメント施設の類は、社会人になってから自分の稼ぎで入場しましたね。友人らとそれなりに楽しんだ記憶があります。ところがバブル崩壊がもたらした不況のあおりで、次々と施設が閉鎖、あるいは経営縮小。かつての馴染み深い場所は大半が姿を消してしまいました。


 ただ、どんな施設にも子ども用の車は必ず置いてあって、それだけが想い出の共通項。昭和四十年代(一九七〇年代)のパンダブームにあやかって作られたパンダ型の電動遊具(またはゴーカート)が、今でもボロボロの姿で全国の遊園地に点在してるはずです。たまに、原型を留めない程ペイントが剥がれたものを見かけますしね。



 時に遊園地は、なにがしかの博覧会に目的を持って隣接される場合もあります。北海道ローカルだと、古いところで昭和五十七年(一九八二年)六月~八月にかけて開催された『'82北海道博覧会』。場所は札幌市豊平区、建物は北海道立産業共進会場(通称、月寒ドーム)。


 遊園地スペースには大型観覧車にジェットコースター(後年にルスツの遊園地に移転される「ループ・ザ・ループ」)、ゴンドラ、ゴーカートなどメジャーな遊具が目白押し。夏休みを利用して訪れていた小学生たちはそれを見て喜び、特に男子児童は、こぞってジェットコースターの列に並んでいたものです。


 順番待ちで数時間立ちっぱなしの日もあったというのに、夏の子どもは体力の塊。当時は真夏日でもせいぜい気温三十度前後だったから命拾いしましたね。これが現在の様な三十五度越えの猛暑だったら、確実に熱中症で倒れます。


 で、肝心の博覧会の展示は、若干シビアで重苦しい内容だった様な……。そう受けとめたのは単に自分が幼かったからか。ちょうど第二次オイルショック終息の頃で、展示パネルの端々にそういった経緯を含めた問題提起が書かれていたのは覚えてます。普通に明るい雰囲気だったのはNECのパソコン展示コーナーくらい。遊園地スペースとの盛り上がりの差に驚いたものです。



 それはさておき、非日常を心置きなく楽しめる遊園地は子ども達の天国。面倒を見る親御さんや保護者全般の苦労は計り知れないものの、通過儀礼として一度は連れて行ってあげて欲しいですね。それが例え、公園や動物園の中にあるミニ遊園地だったとしても。


 昭和の頃によくあった、デパートの屋上に位置するミニ遊園地はもう見る事も出来ない幻の存在なのかしらん。たいがいは遊園地、ペットショップ、ゲームコーナー、フードコートの四本柱でしたけど。


 特にペットショップの一角は鳥の鳴き声とケモノ臭が凄くて、動物嫌いの母親には超絶不評。遊園地の定番であるソフトクリームは、一階下(つまりデパート最上階)のレストラン街でしか食べさせてもらえませんでした。自分的には、スマートボールの筐体で遊べれば他はどうでも良かったので、気にも留めませんでしたが。


 もしかしてあれは、騒音や臭味くさみのおびただしい店舗を屋上に集めていただけだったとか。これが現在のショッピングモールなら、安全や衛生面の問題もあってコーナーを独立させますよね。


 規模の大小を問わず、遊園地といったつかのまの非日常空間は、それなりの模索の上に成り立っているのでしょう。

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