第20話 お母さん猫の話。



 今度はお母さん猫のお話です。



「それはまだ貴方が生まれる前の話。お母さんは出かけていたの。初めての冒険なんてワクワクは無かったわ。なんの疑問も抱かなかったの。だって、私のお母さんやお父さんが教えてくれたから。二本足で歩く人間をね。」


 仔猫は静かに聞き入ります。


「だけど、昔は人間は貧しい暮らしをしていたのよ。私達もね。だから悪い人間もいたの。お母さん達は、そのまたお母さん達から人間には近づいては行けない。そう言われて育ったわ。」


「そんな!優しい人ばかりだったよ!」


「ええ。私もそう思うわ。」


 お母さん猫は仔猫の頭を撫でます。



「お母さんはね、いつものように出かけていったある日の朝、大きな鳥に狙われてしまったの。とても怖かったわ。もうダメだと思ったの。」


「それで!どうなったの!?」


 仔猫は興奮気味に聞きました。


「その時、1人の人間が来てドンッと大きな音がしたの。鳥は地面に落ちて、、そのまま死んでしまったわ」


「そんなあ…」


「でもね、そのおかげでお母さんは助かったのよ。今でも忘れないわ。」


 仔猫は少し怖いと思いました。


「私達も小さな鳥や生き物を食べるでしょ?人間も同じなんだって思ったのよ。私は貴方より少し大きくて、人間を何度かみたことがあったわ。でも人間に近寄ったのは初めてだったの。」



 お母さんは仔猫に昔の話を聞かせながら出来事を思い出していました。

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