第34話 夕食

「もうびっくりしたよ」


そう相も変わらず屈託ない笑みを浮かべながら、話しかけてくるのは、小動物もとい、ギルド入り口で一瞬話をしたこどもである。


「無事入れたんだね。よかったよかった。いやー私もさ入れないかとひやひやしたんだけどさ・・・」


さっきまでは食べることに全集中力をかけていたのかと思いきや今度は話すことに全神経を使い始めたようだ。まるで、(こんなことをいうのは両方面に申し訳ないが)おばちゃんの井戸端会議の様相だ。


話したいおばちゃんたち同士が集まって話し始めて。

そんな井戸端会議はどっちかが絶対に聞き手に回らなくちゃいけない。そんなことは話したいおばちゃんにとって我慢なることなんだろうか。

それとも井戸端会議なんて案外、話したいおばちゃんとそれに付き合っているだけのおばちゃんのセットによって出来上がっているんじゃないだろうか。つまり案外井戸端会議っていうのもギスギス空間が生まれてるんじゃなかろうか。


なんて意味もない、そして答えのわからない問答を一人でしているうちに・・・


「私ファナっていうの。ちなみにそっちはなんて名前してるの?教えて教えて!」


いつの間にか話のターンが自分に回ってきているようだった。


「自分は伸也です。」


「なんでそんなにかたくるしいの~いいよもっと楽に楽に。

それでねファナは冒険者になるために村から降りてきたんだ。でも知り合いとかいなくて寂しかったんだよね。ねえぜひ友達になってよ!」


グイグイ来る。途中で相槌を打つ暇もないほどに。


「う、うん。自分も知り合いがいなかったんだ、よろしくね。」


「やったー!これからよろしくね!そういえばここのご飯おいしいよ!伸也も食べなよ!カウンターに行って、くださいなーっていえばもらえるよ!やったータダだよ!」


めちゃくちゃ元気やん。ひとまずファナに促されるままカウンターに行きご飯をもらう。

見てくれは焼き鳥丼だった。

ぶつ切りになった肉を特性のタレに浸して焼く。どんぶりには見た目完全にお米なそれの上に、キャベツの千切りらしきものを敷き、その上に肉を置いたものだ。


「はいおまち。」


受け取ってファナの正面席へと戻ってきた。

ひとまず一口。(ファナはどうしているかといえば、さっきまでと同じようにどんぶりをかき込んでいた。)

口に広がるほど良い甘辛ダレとシャキシャキとした歯ごたえ、そしてお米のもっちりとした触感、ではなく・・・


口に広がるのは甘み、そして甘み、そして甘み・・・

総じて甘い!

決して砂糖の甘みというわけではない・・・はずなのだが、伸也の味覚にはどうしても甘いと感じてしまう。ちらりとファナを見ると相も変わらずがつがつとかき込んでいた。


一つ一つ食べてみよう。

まずお肉。これは・・・まあタレかかってるから甘いのは受け入れよう。

つづいてキャベツ(?)これはどちらかというと歯ざわり食感が先立ち、味はというと素朴なはずだ・・・

甘い。果物食べてるみたい。なんて表せばいいんだろう。砂糖のようなthe甘味というほど甘くはなく、かといって薬のシロップのような独特な甘みでもなく。

お米は・・・あえて卵をあえてある・・・?

お米と卵焼きを一緒に炒めたみたいな味がする。


総じて甘い。うーん。なれないなーこの甘さは。

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