第20話 忍者のような気持ちで。

「なんかこそこそ移動するのって子供の頃によくやった忍者ごっこ見たいで楽しいな。」


 夕日が隠れ、辺りが闇に包まれた頃ゆっくりと地下牢を開けるものの姿があった。そのものは身を屈め、まるでチュパカブラのようにして地上への道を散策をしていた。

 地下牢は蟻の巣のような形の形状をしていて、1本の通路を主軸し、木の枝のように牢屋が広がっているといった形になっていた。念のためひとつひとつ牢屋を覗き回っていたのだが、ゆんはおろか人が1人もいなかった。例え人がいたような形跡があっても、鍵がこじ開けられたとかそんな様子は全くなかったため、自分のように脱獄したのだろうか。そう考えるとなぜこの場所はあるのだろうか・・・そんなことを考えつつ、道を進む。

 自分のいた牢屋から徒歩約3分。地上に上がるものと見られる階段を見つける。念のため息を殺しゆっくりと階段を上る。そこには、誰かがいるわけでもなく、ひっそりとした空間が広がっていた。

 辺り一面をぐるりと観察してみる。牢の階段を出て右側、そこには低い建物が立ち並んでいる。所明かりが漏れ出る家が見れる辺り、夜に営業する居酒屋のようなものもあるのだろうか。一度は足を踏み入れてみたいな。とかのんきに思えるほど町はのどかで活気づいているように思える。

 続いて左側を見てみよう。右の町風景とはうってかわってひっそりとしている。


「今からここに武器なしで忍び込むのか。心配だな~。まあもっとも武器があっても使えないんだろうけどさ」


牢屋いる間考えていたのだが、一人で逃げるという選択肢も確かにある。

 でももし捕まっているのだとしたらなにか申し訳ない気持ちが足を引きずりそうだ。それにこの世界に一緒に来たもの同士一緒にいた方がいろんなことを情報交換できるだろうという思いから今からこのひっそりとした城に突入する。


「よっしいっちょやったりますか!」


恐怖という感情を気合いではねのけ、身を屈め走りつつ城へ走りながら近づく。もし自分が小学生だったら[シュタタタタタタタタ]とかいいながら走っていそうなものである。

ーーー

 走りながら思う。今着ているのがジャージでよかったと。あのときゆんから自分のジャージを取り出したときは少し驚いたけど、それでも今はそのお陰で身軽に城へと突入できる。そう思うと、感謝と共に、助けなくてはならないという気持ちがわいてくる。


「行こう。躊躇している暇はない。」


城へと歩みを進める。

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